北朝鮮で最近、立て続けに毒殺事件が起きたと米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。現在までに犯人逮捕に至っていない。そして、治安当局は、捜査が進まないことの言い訳のようにトンチンカンな布告を出し住民を呆れさせているという。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)のRFAの情報筋によると、事件が起きたのは今月1日。清津(チョンジン)市の水南(スナム)市場で、ある住民が突然口から泡を吐いて死亡する事件が発生した。詳しい状況は明らかになっていないが、被害者が死亡したのは市場のリンゴ売り場のすぐそばだった。

毒殺事件は、韓国の仕業?

同市内の別の市場でも、毒殺事件は相次いだ。

清津市内の羅南(ラナム)区域と浦港(ポハン)区域の市場でも同様の事件が発生。司法当局が遺体を解剖した結果、3件とも毒物の入ったリンゴを食べたことが死因だと発表した。

北朝鮮版「林檎殺人事件」の話はあっという間に街中に広がり、市民の間に動揺が広がった。当局は動揺を抑えるため、「韓国の国家情報院の工作員が中国産のリンゴに毒を入れたので、リンゴの輸入を禁止する」との発表を行った。

しかし、突然降って湧いた「韓国犯人説」と「リンゴ輸入禁止令」に、多くの市民は呆れている。

事件を伝えた情報筋によると、こうした発表を信じる住民はほとんどいない。北朝鮮当局は、これまでも、情勢が緊張する度に「米国や韓国の仕業だ」と国外の敵のせいにして、国内の動揺を収めるという手法を使ってきたからだ。

また、韓国を犯人にしておけば「既に南に逃げてしまった」などと逮捕できない言い訳にもなる。

一方で「本当に毒の入ったリンゴを食べたことが死因だとすれば、高濃度の残留農薬や殺虫剤によるものだろう」との見解を披露する人もいる。これは、中国製食品の安全性を問題視する見方が、北朝鮮でも広がっていることを意味する。

当局の「リンゴ輸入禁止令」により、とんだとばっちりを受けた人々がいる。リンゴを扱う商人たちだ。

朝鮮半島では、毎年4月5日頃に「寒食」(ハンシク)というお墓参りの日を迎える。先祖を祀った祭壇には様々なお供え物が並べられるが、中でも保管も販売も容易なリンゴは人気が高い。

この時期になると、中国から大量のリンゴが輸入され、市場は特需に沸くが、当局の禁止令により吹き飛んでしまった。商人たちは泣くに泣けない寒食を迎えている。

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