中国駐在の北朝鮮領事が、中国国内で飲酒運転で死亡事故を起こしたが、罪に問われることなく平然と暮らしているという。金正恩第一書記と近い関係にあったからだ。

中国のデイリーNK対北朝鮮情報筋は語る。

「事故を起こしたのは中国駐在のリョム・チョルチュン領事だ。リョム領事は2月10日未明、中国の丹東で開かれた長距離ミサイル発射を祝うパーティで酒を飲んだ後、泥酔状態で車を運転し、センターラインを超え、対向車線のタクシーに衝突した。この事故で、タクシーの乗客と運転手3人が死亡した」

中国外務省の華春瑩副報道局長が23日、定例記者会見で事故に言及し明らかになった。

中国では、2011年に道路交通安全法が改正され、飲酒運転で事故を起こすと、免許が取り消され、刑事責任を追求される。

リョム領事は外交官特権により中国では処罰されない。しかし、北朝鮮当局は被害者に50万元(約873万円)、合計で150万元の賠償金を支払ったという。

外交官が当該国の国民を死亡させることは外交問題に発展しかねず、金正恩氏の顔に泥を塗ったリョム領事は、厳罰に処されてもおかしくないが、時間が経ってもこれといった処罰は下されなかった。

お咎めなしのうえ、当局が巨額の賠償金を支払ったことが知れ渡ると、北朝鮮関係者たちは一様に激怒。コネで事件を揉み潰したからだ

リョム領事の兄は北朝鮮軍総政治局宣伝副局長のリョム・チョルソン氏。そのバックには金正恩氏の実妹で労働党宣伝扇動部部長の金与正(キム・ヨジョン)氏がいる。

情報筋は、今回の事故が賠償金問題になったため、与正氏が正恩氏に働きかけ、最高指導者の名前で「事件を大きくするな」との指示を下した可能性が高いと見ている。

リョム・チョルソン氏は朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の中将で、軍のプロパガンダを管轄している人物だ。金正恩氏の公開活動に同行することもある。与正氏に信頼されており、無視できない影響力を持っていることは言うまでもない。

仮に死亡事故を起こしたリョム領事を処罰すれば、軍で宣伝扇動を担当しているリョム局長も更迭せざるを得ない。金正恩氏は、体制の維持に欠かせない人物、つまり忠誠分子を自ら保護しながら、さらに忠誠心を引き出すために、便宜を図ったようだ。

一方、今回の事態について北朝鮮の貿易関係者は「金正恩氏一族とコネのない人間が事故を起こせば、厳罰に処せられ、もう二度と復帰できないだろう」「コネを利用して生き残ったリョム・チョルチュンは恥知らず」などと陰口を叩いている。

また、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)によると、賠償金をリョム領事一人で工面できなかったため、勤務先である瀋陽総領事館丹東支部が管轄する貿易会社の駐在員から強制的にカネを集めたことで、恨みを買っているという。

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