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2015年に正式な手続きを踏んで中国を訪れた北朝鮮国民の数は18万8300人に及ぶ。そのうち、親戚訪問や観光で中国に入国した人、つまり「私事旅行者」は1600人だが、その多くが中国で働いているものと思われる。一度中国に行った人は、一銭でも多く稼ぐために期限の3ヶ月を越えて何年も滞在することが多い。

北朝鮮当局は、国内で何か起きた際には中国訪問を禁止する傾向にある。例えば、金正日氏が死去した直後、金正恩第1書記が後継者として公式に登場した2010年9月の第3回党代表者会の前後2ヶ月は、一般住民の中国訪問が禁止された。

今月1日に国連安保理で、中国も賛成し、対北朝鮮制裁案が全会一致で採択された。それに伴い、中国は北朝鮮からの石炭の輸入を停止した。今後、中朝関係の冷え込みが予想されているが、私事旅行者の出国は今のところ禁止されていない。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が伝えた。 咸鏡北道の50代の住民は「中国に行く私事旅行者の手続きが中断したという話は聞いていない」「核実験を行った1月、ミサイルを発射した2月にも数十人が中国に向かった」と述べた。

この住民は「当局は『米国と南朝鮮(韓国)が北朝鮮を圧殺するために戦争を起こす』などと騒ぎ立てているが、本当に戦争が起きるんだったら中国旅行を許可するわけがない」とも述べている。

一方で、私事旅行者に対する思想教育は大幅に強化されている。 親戚訪問のため吉林省にやって来た北朝鮮住民によると、中国に行く旅行者への思想教育が大幅に強化された。出国前に1ヶ月にわたって「集中講習」を受けさせられるが、その中では「韓国人とは絶対に接触するな」と口うるさく言われたという。

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私事旅行者への思想教育は、今回の制裁採択よりはるか前、韓国人宣教師のキム・ジョンウク氏が2013年10月に、スパイ容疑で北朝鮮当局に逮捕されて以降強化されているが、今回さらに強化された模様だ。

キム氏は、中国の丹東で2007年から脱北者や私事旅行者を対象に布教活動を行いつつ、「貧しい北朝鮮の人々を助けたい」との理由で小さな製麺所を作り、私事旅行者を働かせたり、衣類、食糧、現金を渡したりしていた。

一方、北朝鮮の保衛部(秘密警察)は、中国に向かう私事旅行者に「韓国系キリスト教会に行って実態を探れ」との指示を出していた。

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両江道のデイリーNK内部情報筋によると、2014年11月の時点での思想教育の内容は概ね次のようなものだ。

「韓国人は国情院のスパイである可能性が高いので、罠にハマるな」
「もし韓国人に会ったなら、相手の顔や服装を記録せよ」
「韓国人から持ちかけられる『オイシい話』は、国情院の罠かもしれない」
「丹東の韓国人が経営する食堂で働くと国情院の魔の手が迫る」

この時点では「韓国人と一切接触するな」との教育はなされていなかったが、今回その方針が撤回された形となった。しかし、観光やビジネス目的で滞在する韓国人の多い丹東で働くとなると、韓国人との接触を完全に断つのは事実上不可能だ。