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戦前の日本の学校には、御真影(天皇、皇后の写真)と教育勅語が置かれた「奉安殿」という建物があった。御真影は命より大切なものとされ、空襲や災害から守るために多くの教師が命を落とした。戦前の教育の愚かさの象徴とも言える存在だ。

北朝鮮は、金日成氏、正日氏の肖像画が命より大切なものとされている。命を投げ出した守った人には「英雄」の称号が贈られ、プロパガンダの道具とされる。

米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)によると、そうした北朝鮮の偶像化を象徴する事件が1月末に起きた。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋によると、1月29日に清津(チョンジン)市の中心にある咸鏡北道の保衛部(秘密警察)の本庁舎から出火した。漏電による火災だったが、おりからの強風で、3階建ての建物にはあっという間に火が回り、保衛指導員1人が逃げ遅れて死亡した。

逃げ遅れた理由は「各部屋に掲げられていた金日成氏、金正日氏の肖像画を守るため」だった。死亡保衛指導員には勲章が授与され、国が費用を負担して盛大な告別式が営まれた。そして当局は「危機の瞬間に忠誠心を発揮した英雄」として、大々的に宣伝している。

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当局は大々的な宣伝をしているが、北朝鮮の人々の間では、保衛指導員の評価は高くない。「勲章なんかもらって愛国者になんかなっても、遺された家族は飯が食えるわけではない。可哀想だ」と、遠回しに当局を批判している。

この建物、清津駅から徒歩5分のところにあり、交通量の多い幹線道路に面しているため、火災のニュースはトラックやバスの運転手などを通じて瞬く間に全国に広がった。そして様々な噂を呼び起こしている。

別の情報筋によると、亡くなった保衛指導員が持ちだそうとしていたのは、肖像画ではなく、税関の機密文書ではないかとの噂が広がっているという。それを言い出したのは、当の保衛部の関係者だという。

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保衛部は、道内各地の税関を監視、統制する任務を担っていたため、貿易関連の機密文書を保管していたという。情報筋は、その内容には触れていないが、莫大な利権に関するものだった可能性もあるだろう。

当局は今回の火災が単純な漏電による火災ではない可能性があるとして、調査に乗り出している。