やはりというべきか、金正恩第一書記は米韓の「斬首作戦」にビビっているようだ。

「狂気」と「体制崩壊」

国連安全保障理事会が、対北制裁決議案を全会一致で採択した翌4日、北朝鮮メディアは、金正恩氏が「新型大口径放射砲」の試験発射を現地指導したことを報道。そのなかで正恩氏は「核弾頭」という言葉を発した。多くのメディアは、このコメントを中心に取り上げたが、これは今にはじまったことではない。

それより注目すべきは、金正恩氏自らが「斬首作戦」と「体制崩壊」と具体的に述べながら、米韓に反発していることだ。

金正恩氏が反発する「斬首作戦」とは、核兵器などの大量破壊兵器使用の動きがあらわれたら、その権限を握る者をあらかじめ除去して被害を未然に防ぐという米軍の作戦だ。米韓が朝鮮半島で斬首作戦を進めるとするなら、対象者は、北朝鮮の頂点に君臨する金正恩氏以外の何者でもない。

確かに、北朝鮮はこれまでも「斬首作戦」や「体制崩壊」に猛反発してきたが、金正恩氏自らが反発するのは今回がはじめてであり、彼自身の「メンタル」、すなわち焦燥感や不安の現れと見るべきだ。

しかし、金正恩氏の焦燥感の現れは、これだけではない。

先述の現地指導のなかでは「朴槿恵の狂気」と、韓国の朴大統領に対して異例の実名批判を展開した。その前日3日には、朝鮮中央通信も朴槿恵氏の出自や生い立ちをあげへつらいながら、巷にあふれる低俗な嫌韓記事さながらの論調で罵倒しつくした。

「斬首作戦」が議論されはじめたのは昨年8月からだが、ここに来て、金正恩氏自らの言葉による過剰な反応ぶり。なにやら、のっぴきならない状況が近づいているのかもしれない。

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記

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