韓国の朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の李永吉(リ・ヨンギル)総参謀長が、2月初めに処刑されたと、韓国の聯合ニュースや韓国主要メディアが伝えた。現時点で詳細は不明だが、処刑理由は分派活動、不正行為などだという。

つい先日、筆者は本欄で「金正恩氏は軍部に対する恐怖政治さえも厭わない」と指摘していたが、李永吉氏の処刑は十分にあり得ると見ている。そして、李永吉氏の処刑が事実だとすれば、やはり金正恩第一書記の恐怖政治が強化されているようだ。

しかし、いくら独裁国家の頂点に立っているとはいえ、巨大な武力を持つ北朝鮮軍の幹部を処刑する金正恩氏の残虐さと強引さは異常だ。

記憶に新しいところでは、昨年5月人民武力相(日本の防衛相にあたる)の玄永哲(ヒョン・ヨンチョル)氏が、大口径の高射砲で文字通り「ミンチ」にされた。

李永吉氏がどのようにして処刑されたのかは不明だが、玄永哲氏の時と同じく、公開処刑の可能性が高い。一昨年の10月に行われた公開処刑については、その場面が衛星写真で確認されている。

北朝鮮国内からは、金正恩氏の「恐怖政治」がひどくなっているという声が伝わってくる。とりわけ、労働党や朝鮮人民軍の幹部になればなるほど、監視・統制が強化されるという。高級幹部ほど、がんじがらめにされているのだ。

しかし、李永吉氏は金正恩氏の信任が厚い人物として知られていた。それにもかかわらず、処刑したとするならば、正恩氏は一体誰を信頼するのだろうか。

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記

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