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朝鮮人民軍(北朝鮮軍)が、相変わらず「飢える軍隊」であることを象徴するような殺人事件が起きた。きっかけは「軍服」だった。

北朝鮮の金正恩第1書記は2013年12月に開かれた「人民軍哨兵大会」で「思想だけでは絶対に戦争に勝てない」「軍人たちは、よく食べさせなければならない」と発言。これに基づき、軍人への食料配給は一時的に増えたが、すぐすぐに減ってしまい、ぬか喜び同然の状態となってしまった。

理由は中間級指揮官が、配給された食料のほとんどを市場に横流しするからだ。

米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)の両江道(リャンガンド)の情報筋によると、軍へは、コメとトウモロコシが7対3の割合で配給される。指揮官は、コメのほとんどを市場に横流しし、代わりにトウモロコシとジャガイモを買う。

コメ1キロでトウモロコシ3.5キロが買えるので、差額を横領する。また、配給された魚もほとんどが市場に横流しされるので、値崩れを起こしたという。

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その結果、地元の10軍団の末端の兵士たちが毎日食べされられるのは、トウモロコシにジャガイモの混ざったものだけになる。これでは立つことすらままならず、その結果、農場での略奪行為などを誘発する。

こうした中間指揮官の横流しが、ついに軍人同士の殺人事件へと発展した。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋によると1月17日、清津(チョンジン)市の羅南(ラナム)市場で、兵士7人が別の兵士3人を襲った。うち1人は死亡し、当局が捜査に乗り出したが、容疑者の逮捕には至っていない。

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被害兵士3人が襲われた理由は、なんと「本物の軍服を奪うため」だった。

実は、加害者の兵士が着ていたのは、個人業者が作った「偽物の軍服」だった。国から支給される冬用の軍服は質がよく、1着40万北朝鮮ウォン(約6000円、コメ80キロ分)もする。軍の指揮官は支給された軍服を市場に横流し。その代わりに、個人業者に1着20万北朝鮮ウォン(約3000円)で作らせ、末端の兵士に配給する。その差額を横領していたのだ。

被害者が「本物の軍服」を着ているのを見て、加害者の兵士らは、それを奪い取ろうとして犯行に及んだのだ。

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指揮官が、そこまでして横領に走るのは軍からもらえる給料が少なすぎて生きていけないからだ。4人家族が1ヶ月食べるには100万北朝鮮ウォン(約1万5000円)が必要だが、大尉は4000~5000北朝鮮ウォン(約60円~75円)、連隊長でも5000~6000北朝鮮ウォン(約75円~90円)で、コメ1キロ買えるかどうかの超薄給しかもらえない。非現実的な給与体系は、北朝鮮の「構造的欠陥」の一つだ。

かつては国からの配給が手厚く、現金はさほど必要なかったが、まともな配給が期待できず、草の根市場経済化の進んだ今の北朝鮮では、不正を働き現金収入を確保しなければ、一家全員餓死を免れないのだ。