北朝鮮当局が、国家安全保衛部(秘密警察)の要員3人を中国に派遣したと、中国在住のデイリーNKの対北情報筋が伝えてきた。派遣目的は、最近脱北した幹部たちを逮捕するためだという。
情報筋によると、保衛部員たち、いわば「「脱北幹部逮捕チーム」は1週間に渡り、中国の瀋陽、延吉、北京で逮捕作戦を秘密裏に行った。彼らは、複数の脱北幹部の写真を持ち、北朝鮮領事館、北朝鮮当局が経営するレストラン、北朝鮮と貿易を行っている朝鮮族の業者などを回り、捜査への協力を要請したという。
「脱北幹部逮捕チーム」は、保衛部の常設部署で、金正恩第1書記の「必ず連れ戻せ」という指示に従い、脱北した幹部や、期日になっても帰国していない私事旅行者(親戚訪問)などの追跡、逮捕に当たっている。
これまで、最大で150人の要員が派遣されたと伝えられるが、今回のように少人数の派遣は異例のことだ。一体なぜか。
「脱北したことを外部に知られないよう秘密裏に解決したという意図があるようだ。保衛部員は、北朝鮮レストランの副支配人の元を訪れ、支配人や従業員の動向、監視資料を受け取り、協力を要請している。また、朝鮮族の業者の中でも口が固く、対北朝鮮ビジネスを長年行っている人にだけ協力を要請した」(情報筋)
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面保衛部員たちは、最悪、脱北幹部の逮捕できなくとも、居場所の把握ぐらいはする必要がある。手ぶらで帰国した場合、処罰されることが確実だからだ。中には処罰を恐れて「韓国に行った」「殺害された」などと虚偽報告をすることもあるという。
「ヤツら(保衛部員)は、何として脱北幹部を見つけるために、一般の脱北者まで手当たり次第に捕まえている。逮捕作戦に巻き込まれないように気をつけなければならない」(情報筋)
北朝鮮がいくら友好国とは言え、自国領土内での秘密要員が逮捕を含めた活動を行うことは、本来なら外交問題に発展するほどの大問題だ。1973年に、韓国中央情報部(KCIA)が、後に韓国の大統領になる金大中氏を東京のホテルから拉致した「金大中事件」では、「主権の侵害」だとして、日本政府は韓国政府に謝罪を求めている。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面北朝鮮保衛部要員の国内での活動について、中国政府は黙認している可能性がある一方で、地方政府や当該官庁は把握していても、中央政府の指導部に報告が上がっていない可能性も考えられる。