中国の北朝鮮レストランで「女性ウェイトレスが強制売春させられている」と、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じている。

北朝鮮当局が外貨稼ぎのために展開するレストラン、通称「北レス」は、中国のみならず東南アジアを中心に展開されている。日本には存在しないせいか、各国の北レスを渡り歩いたり、通い詰める熱狂的な日本人ファンもいる。

最も北レスが多い中国では、中朝国境のみならず上海でも一時期は人気があった。ところが、最近は中国の景気が低迷していることもあり、売り上げは下がる一方だ。

しかし、各レストランには本国へ送る上納金のノルマが課せられている。RFAによれば、食堂を経営する北朝鮮当局が、収入を維持するためにウェイトレスに強制売春をさせているというのだ。昨年12月には、売春を強要される状況に耐えきれず、ウェイトレスが失踪する事件も起きたという。

RFAの情報源はすべて第三者からの伝聞であるため、真偽のほどはわからない。ただ、彼女たちの大多数が「実習生」という名目で実質的にタダ働きさせられ、外出も厳しく制限されている実態もある。北朝鮮レストランのみならず、北朝鮮の海外派遣労働者は、国連でも告発され国際的な人権問題となりつつある。

一方、中国のみならず北朝鮮国内でも売春は蔓延している。6年前には女子大生らによる売春行為に関する治安当局の内部資料が流出。「通勤時間にバス停や駅で集団的に売淫行為を行っている」という驚くべき実態が明らかになった。

北朝鮮では、90年代中頃からの深刻な経済難を背景に、家族を養うために女性が売春に走らざるをえない状況が生まれ始めた。こうした売春は「生計型売春」とも呼ばれ、デイリーNKが入手した現場映像でも、その実態が垣間見えてくる。金正恩第一書記は、国内の売春行為に対して厳しく取り締まるよう指示を下しているが、根絶には至らない。


それもそのはず。繰り返すが、北朝鮮国内の売春は、慢性的な経済難が原因だ。そして、中国の北レスにおける強制売春は、本国政府が現地の運営者に厳しい外貨稼ぎのノルマを課しているからだ。水爆やミサイル問題で注目されがちな北朝鮮だが、金正恩体制の下で、多くの女性が犠牲になっている現実にも、国際社会は注目すべきだ。

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記

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