住民からは、「冬になると飢えよりも寒さの方がよっぽどツラい。凍死する住民も多い」という証言も多く聞かれる。それでも北朝鮮当局は、特別な対策をとらない。
(参考記事:北朝鮮の厳しい冬「国の電気に頼れば凍死」)厳冬期は、朝鮮人民軍の兵士にとっても最も辛い時期だ。毎年12月から翌年3月末まで、まともに食事をすることもできないまま厳しい冬季訓練を行う。空腹に耐えかねた兵士が北朝鮮国内だけでなく、中国側に越境して略奪を働くケースも多い。
(参考記事:冬季訓練は略奪戦争…「軍人、住民に暴行殺害も」)(参考記事:独占入手!中国軍に制圧・連行される「北朝鮮脱走兵」の現場写真)
ただし、一人だけ北朝鮮の厳しい寒さから逃れている人物がいる。金正恩第一書記だ。普段から恵まれた環境で過ごしている正恩氏。ある時、酷寒のなかでの現地指導で、彼だけが手袋をはめ、ポケットに手を入れていた。
(参考記事:酷寒のなか、一人だけ手袋をはめてタバコを吸いながら現地指導する金正恩氏)こうした立ち振る舞いでアピールするよりも、金正恩氏自身が率先して「寒さ対策」をリードすれば、国内外の評価も少しは上向きになると思うのだが。
高英起(コウ・ヨンギ)
1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 、 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 、 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。