韓国政府が全羅北道の益山市で進めていた、イスラム教徒向けのハラル食品を製造する工場の建設が中止に追い込まれた。日本の一部メディアはその理由として「世論の反発」と「デマの流布」と伝えている。しかし、本当に反発したのは「世論」なのだろうか。

建設計画は、現在計画中の「益山国家食品クラスター」の一部に、ハラル食品の加工場を作るというものだ。増え続けるイスラム圏からの観光客向けにハラル食品を供給すると同時に、イスラム圏にハラルの韓国食品を輸出するという目標に基づいたものだ。

これに対してキリスト教の保守プロテスタントが猛烈に反発する。

韓国メディアによると、保守プロテスタント団体や一部市民団体、動物愛護団体は、益山市庁の前などで激しい反対集会を繰り返した。ハフィントン・ポスト・コリアによると、彼らの掲げていたプラカードの内容はイスラム系に対する差別に満ちあふれている。

「イスラム教徒が増えると女性のレイプが増える」

「ハラル食品工場ができるとわが街はテロリストタウンになる」

「イスラムが押し寄せてくる!テロが押し寄せてくる!」

「ハラルに反対し、ムスリムがこの地に来ることに反対する!」

性的少数者(LGBT)の祭典、ソウルクィアパレードの際に、保守プロテスタントグループが掲げていた「同性愛者はエイズになって死ぬ」「治療費に国民の血税が無駄に使われる」と言ったプラカードと非常に似通っていると言えよう。また、反対運動を行っているパン・ウォルソク牧師は「ニュースアンドジョイ」とのインタビューで「昨年12月22日に益山で発生した地震は、イスラム勢力の拡散を憂慮する多くの国民と神様の意思を政府は無視し続けている。ハラル食品団地の建設を強行するならば、いかなる禍が起こるかわからないという神様の最後の警告だ」と述べた。

イスラモフォビアに基づいた幼稚なヘイトスピーチに対して、キリスト教の内部からも批判が起きている。

神学者のパク・ヨンドン教授は「そんな考え方はキリスト教的ではなく、異端だ」と激しく批判している。さらに、性的少数者への激しい攻撃を行っているエステル祈祷運動本部ですら「デマは反対運動のためにならない」との声明を発表している。しかし、反対運動はネット上で拡散する。

韓国のJTBCは、ネット上で流れるハラル食品団地に関するデマの内容を次のように報じた。

政府は50万坪の都市にハラル食品団地を建設、無料で業者に貸し出す

建設費、運営費は全額政府が負担

イスラム教では韓国人の就業は禁じられているため、雇用の創出にはつながらない

イスラム教徒の食肉加工業者など100万人が入国する

その10%がテロリストだが、1人あたり150万ウォンの定着支援金が支給される

説明の必要すら感じないほどイスラム教と食肉加工業への偏見に満ちたデマだ。

しかし、韓国政府はネット上の悪質なデマと保守プロテスタントとヘイトスピーチに押される形で、ハラル食品工場の計画を白紙に戻したと韓国メディアが伝えた。一方、韓国のニュース1は25日、政府関係者が計画の白紙化を否定したと伝えた。

これに対して、ソウル在住の30代男性はデイリーNKジャパンのインタビューに「クィアパレードに飽きたらず、今度はイスラム教か。またキリスト教がやらかした。うんざりだ」と述べた。

人口5000万の韓国で外国人が占める割合は2015年末で3.4%。全国77の市のうち、12市で外国人の割合が5%を超えている。総数としては日本より少ないものの、人口に占める割合(1.7%)は日本より高い。

多文化社会に移行しつつある韓国だが、保守プロテスタントを中心に、それに対する激しい抵抗が起きている。その理由を一言で説明すると「イスラム教徒が増えて、自分たちの目指すキリスト教の国・韓国が遠のく」というものだ。

韓国の法務省の統計によると、その数は20万人に達しているが、人口比に置いてはごくごく少数なのに、排外主義的な傾向を持つグループは「イスラム教徒が韓国を支配する」などとゼノフォビア(外国人嫌悪)を煽っている。「在日特権」「在日が日本を支配する」などとデマを流し、ゼノフォビアを煽っている点では、日本の在特会をはじめとした「行動保守」とまったく同じと言える。

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