今年7月に任期を終える国連北朝鮮人権状況特別報告者のマルズキ・ダルスマンの後任に女性、しかも東アジア出身者が選ばれるとの観測が出ている。北朝鮮で、女性に対する人権侵害が横行している事実は国際社会でも周知されてきており、女性の特別報告者が選任されれば、その問題に鋭く切り込むであろうことは容易に想像できる。


もちろん北朝鮮の人権侵害は女性のみならず、あらゆる分野に及んでいる。あまりにも広範囲で根が深いことから、核やミサイルと違い、とうてい取引できない問題であり、金正恩体制にとっては大きな足かせとなり続ける。

北朝鮮の残虐な人権侵害の実体は、挙げればキリがないが、「北朝鮮における人権に関する国連調査委員会(COI)」の最終報告書(以下、国連報告書)には次のような衝撃的な証言が収められている。

「母とその子は収容所内の懲罰棟に連行され、赤子は犬のエサの器に投げ込まれた」

(参考文献:国連報告書「政治犯収容所などでの拷問・強姦・公開処刑」

これ以外にも、北朝鮮の体制が、朝鮮人女性が外国人男性との間でできた子供を産むのを嫌い、強制堕胎や乳児殺しまで行っている事実などを国連報告書は指摘している。

(参考文献:国連報告書「脱北者に対する拷問・強姦・乳児殺しの実態」

こうした北朝鮮の人権侵害に対する国連や国際社会の追及は決して終わることがない。北朝鮮自身が自浄能力を発揮する、すなわち金正恩自身が断罪されない限り、経済復興も改革・開放も進まないが、それは同時に体制崩壊にもつながりかねない。

次の国連北朝鮮人権状況特別報告者が女性となれば、北朝鮮にとっては極めて厄介な存在となって立ちはだかるだろう。一見、核やミサイルでやりたい放題に見える金正恩体制。しかし、人権問題については極めて厳しい状況に追い詰められているのだ。

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記

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