諜報からはじまってテロや要人暗殺などの工作を行う北朝鮮の対外工作機関「偵察総局」のトップである金英哲(キム・ヨンチョル)偵察総局長が、朝鮮労働党統一戦線部の部長に就任したとデイリーNKの内部情報筋が伝えてきた。現時点では、公式には確認されておらず事実は不明だが、その背景に注目される。
平安南道(ピョンアンナムド)の情報筋は、「つい最近まで偵察総局長を務めてきた金英哲氏が、突然統一戦線部に異動になった。交通事故で亡くなった金養建(キム・ヤンゴン)氏が担ってきた対韓国業務を引き継ぐ形だ。確認はされていないが、事実上統一戦線部の部長に昇進したものと見るべきだろう」と述べた。
金英哲氏は、朝鮮労働党中央での勤務経験はない軍人だ。しかし、2004年の南北将校級会談では、北朝鮮の主席代表を務めるなど、10年以上に渡って対韓国事業の経験を積んできたこともあり、金正恩第1書記が、金養建氏の後継者に選んだものと見られる。
韓国政府系の研究機関の関係者は「北朝鮮で、軍出身者が労働党で対韓国事業を担うことは一般的ではないが、60年代には軍人が主導していた歴史がある。金英哲氏は韓国との交渉を務めたこともあり、統一戦線部の慣例から外れた人選ではない」と述べた。
韓国に対する挑発行為を主導したと言われている金英哲氏が統一戦線部に異動したことについては「彼は代表的な対韓国強硬派なので、今後北朝鮮が韓国に対して強硬策を取ると見ることもできる。北朝鮮は、核実験成功を喧伝していることもあり、今後南北関係の主導権を握ろうと、核兵器の発射をちらつかせて韓国を脅迫する可能性もある」と述べた。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面一方、次の偵察総局長について別の情報筋は「今のところポストは空席になっているが、対韓国専門家が就任すると思われる。偵察総局長は一般軍隊より重要度が高いため、局内から若くて有能な人物が抜擢されるだろう」と述べた。
また「偵察総局には作戦局、偵察局など6つの対韓国専門局と、複数の対韓国サイバー攻撃、技術攻撃部署が存在する」「それらの局長の中から、金正恩氏を補佐できる若くて対韓国事業の経験が豊富な者が選ばれるだろう」とも述べた。