日本の独自制裁によって、クロマグロは輸出禁止リストに入っていることから、北朝鮮に、直接輸出されているとは思えない。中国経由が最も可能性が高いが、もしかすると「産地偽装」かもしれない。いずれにせよ、幹部からすれば「将軍様が好んだクロマグロを食べられるぐらい自分も偉くなったもんだ」といったところか。
(参考記事:北朝鮮、高級幹部の間で「日本産マグロの刺し身」がブーム?)こうした北朝鮮内部の事情を無視した経済制裁に果たして意味はあるのだろうか。筆者は、なにも国連や日本独自の経済制裁を反対しているわけではない。北朝鮮の姿勢を転換させる効果があるなら積極的に進めるべきだ。ただし、実効性がない現実を見て見ぬふりをして、アリバイ的に北朝鮮に圧力をかけているふりをすべきではないと再度強調したい。
高英起(コウ・ヨンギ)
1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 、 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 、 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。