暴走という極端な示威行動はさておき、古今東西、バイクは若人にとって憧れのアイテムだ。北朝鮮でも、「デザインが格好いい」という理由で、ヤマハをはじめとする日本製バイクは憧れであり、「富の象徴」だ。
さらに、トンジュ(新興富裕層)の子弟たちは、自分たちを誇示するためにバイクに乗り始めた。昼夜問わず騒音をまき散らし、町や村中を爆走する彼らは、北朝鮮版「暴走族」とも言える。
北朝鮮とバイクについて考えていると、ふと思い出したことがある。拉致被害者の曽我ひとみさんの夫、チャールズ・ジェンキンスさんだ。
今から10年前、なぜかバイク雑誌「ミスター・バイク(2006年11月号)」の表紙をジェンキンスさんが飾った。
実は、ジェンキンスさんは、子どものころからバイク好きで北朝鮮でもバイクを乗っていたというのだ。記事のタイトルは「二輪誌初掲載、ジェンキンスさんのバイクライフ」。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面ジェンキンスさんは、北朝鮮でバイクに乗っていたが、エンジンが壊れてしまった。そこで、日本製の発電機エンジン(?)を載せるなどして、自分で改造してバイクに乗っていたという。
目的や用途はどうであれ、筋金入りのバイク好きは、どこにいっても部品さえ調達できれば改造をしてでもバイクに乗りたいようだ。
拉致被害者の夫であり、元米国軍人でもあったことから、北朝鮮では厳しい立場にあったと思われるジェンキンスさんが、ささやかなバイクライフを楽しんでいたエピソードには、少しだけほっとさせられる。