北朝鮮の祖平統が運営するインターネットサイト、「我が民族どうし」が19日、「民族服を楽しんで着るように」という記事を載せた。
この記事は、「民族性は言語や礼儀道徳だけでなく、身なりにも現われる。民族服を楽しんで着るようにして、特に女性たちが着るチマチョゴリは世界に誇るに値するものだ。女性が朝鮮のチマチョゴリを積極的に着ることを奨励しなければならない」と話した金正日の教示を紹介した。
このようにスカートをはくことが、いちいち「方針」や「指示」として伝われば、その日暮らしで汲々としている北朝鮮のほとんどの女性は当惑してしまう。
現実とはかけ離れているチマチョゴリを、民族の高尚なものという口実で着るように強要するため、出勤や毎日の生活の中で北朝鮮の女性たちはどれだけ不便を感じているだろうか。
チマチョゴリは韓国民族の伝統衣装であり、肩が下がってうなじが細い朝鮮の女性の体つきによく似合う衣装だ。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面北朝鮮の女性も結婚式や節日、選挙などの行事、特に金日成や金正日の銅像に花束を贈呈する時に、チマチョゴリをよく着る。さまざまな美しい朝鮮の服を着た女性たちが通りにあふれると、見ている男性たちの口元も自然とほころぶ。
ところで、どうしてこのように美しいチマチョゴリを着なさいという金正日の指示が、北朝鮮の女性にとっては苦しい指示になるのだろうか。
家族の生計の責任を負って、毎日孤軍奮闘している北朝鮮の女性たちには、一般のスカートやチマチョゴリはまったく似合わない贅沢品だからだ。きれいなスカートをはいて、良い飲食店に行って友達と遊ぶのであれば、チマチョゴリほど良い服はない。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面だが、市場や路地で自分の体の2倍もある荷物を背負って運び、売台に並べて一日中お客さんとやりあう女性にとって、また路地で品物を売って監視隊が近づいて来たら素早く逃げ出さなければならない路地の女性にとって、さらには石炭汽車が通ったら、その下に素早く入って行って石炭を運ばなければならない北朝鮮の女性にとって、スカートをはいて気高く歩きなさいという言葉は、実に場違いな言葉のように聞こえる。
たいてい夏になると、女性は無条件スカートをはきなさいという指示が伝わり、幹部たちは「将軍様の指示は法律だ」と言い、実情も考えず、無条件住民たちに強制する。
指示文は中央党から道の党、市の党、郡の党を経て、一番下層の組職まで下り、住民に伝達される。下層の実態を一番よく知っている末端幹部たちは、こうした指示がいつわりでむなしいということを分かっているが、党と首領に忠誠を誓ってこそ身を守ることができるため、取り締まりに乗り出す。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面普通、大学生の監視隊や労働者の監視隊などを動員して、朝の出勤時間や昼休みに町角で、出勤したり通りを歩く女性がスカートをはいているかどうか見張っている。
要領のよい女性は、通りを歩く時は取り締まりがあるので、ズボンをはいていても、かばんの中にスカートを入れて出勤する。監視隊の姿が目にとまれば、さっと路地に入ってスカートにはき替える。忙しい時はズボンの上にスカートをはいて、ズボンのすそを上げてスカートだけはいているように見せかける。職場についたら、このようにうるさく言われることはほとんどない。
ある時、ズボンをはいて急いで出勤した女性が、思いもよらず路地でズボンを取り締まる監視隊とでくわすことがあった。
当時、この女性が通っていた職場は家から歩いて40分ほどのところにあったため、朝と夕方の出退勤は本当に苦痛だった。できれば簡単にズボンをはいて出勤したかったが、「スカート取り締まり」があるので毎朝いらいらしていた。
北朝鮮はまだ、都市にもバスが少なく、朝急いで会社に行く人たちは、「のろのろのバスに乗るよりも11号車(両足で歩くこと)が一番だ」と言って歩くことが多い。
監視隊がこの女性に、「どうしてスカートをはいて出勤しないのか」と言うと、荒てた女性が「かばんの中にスカートがありますが、とても忙しかったのでまだはくことができませんでした」と言い、「ここですぐに着替えます」と答えた。
すると糾察隊員は「なぜ(金正日の)親筆の指示をきちんと執行しないのか。しなさいということをそのまましなければ、罰金を払うことになるのを知らないのか」と言い、今すぐ罰金を出しなさいと言ってきた。払わなければ、所属している団体と名前を書いて、市の当局に報告すると脅した。
職場で党書記が「ズボンの取り締まりにあったら、職場の恥さらしだ。私も市の党に呼ばれて批判を受けて、朝第3放送を通じて名前が公開されるから、絶対に取り締まられることがないようにしなさい」というのを聞いたことがあったこの女性は、泣きそうになったという。
取り締まられた人は1年間職場の総会で批判の的になるのだが、それほど嫌なことはない。だが、いくら泣いて頼んでも結局聞き入れてくれなかったので、お金が取り締まり員のポケットに入ることを知りながらも、悔しいけれどもかばんにあったお金を取り出して渡して、ようやくその糾察隊員から逃げることができた。
昨日通話した咸北道セビョル郡の金さん(女性、35)は、「今もスカートの取り締まりが厳しいのですか」と聞いたら、「そのようにへんてこなことをしていなければ、朝鮮は10回は変わったはずよ」と言い、「今はスカートの取り締まりにあったら700ウォン出しなさいと言われる」と、怒った声で話した。
金さんは「スカートやチマチョゴリの着方を知らないで、着ることができない人がいるのかしら。1年間、12ヶ月間、忙しくて死にそうなのに何がスカートよ」と言って、「スカートをはきなさいと言うだけでなくて、スカートをはいて暮らすことができるようにしてくれなければならないんじゃないの」と憤慨していた。
金正日は自分の趣向で、「チマチョゴリが良いから着なさい」と指示を下すが、それが北朝鮮の現実とどれだけかけ離れた言葉なのか分かっていない。女性は自転車に乗ってはならないという指示も、結局は商売をしないで飢えなさいということになるのに、自転車に乗ることができないようにすることと、何も違わないではないか。
政治家にも言っていた人がいたが、金正日は本当に悪い人だ。北朝鮮で女性がスカートでもズボンでも、半ズボンでもはばかりなく自由に着ることができる日、その時、本当に人民が首領のくびきから脱した自由な世の中になるだろう。