さらに、多くの人が「罪状」すら知らされないまま連行されている事実が、人々の恐怖心を倍加させている。国連報告書は次のように述べている。
政治犯罪の被疑者は夜間に路上や職場で逮捕されて抑留施設に連行されることがしばしばである。取り調べの内容により逮捕理由が推測できるのみであること少なくない。
アン・ミョンチョル氏は、自分が政治犯収容所で長年の労働に服していた間に話をした収容者のほとんどは逮捕理由を知らなかったと証言した。「彼らの話によれば、ある夜、就寝中に突然[国家安全保衛部担当官が]家にやってきて逮捕された…収容者たちは悪い人間だと教えられた。しかし、これらの人たちは、自分がなぜそこにいるか理解していないことを知った。」
このようにして連行された人々は、どのような目に遭わされているのか。その詳細については次の回で述べる。
高英起(コウ・ヨンギ)
1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 、 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 、 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。