「パン、パン!」
北朝鮮軍の兵士が撃った2発の銃声で、金剛山の観光客、パク・ワンジャさんが亡くなった。 金剛山観光客射殺事件から11日でちょうど1年になる。
韓国政府は事件が起きた翌日(7月12日)、真相が明らかになるまで金剛山観光を中止すると発表した。韓国は北朝鮮に、韓国当局者による現場調査を要求した。しかし北朝鮮は「韓国責任論」を主張して、韓国側の要求を断り、むしろ韓国が謝罪するべきだと主張した。
その後、韓国政府は独自に事件の捜査を始め、銃撃の時間や場所などが北朝鮮の主張とは異なることが分かったため、北朝鮮に正確な情報を要求した。
また、去年7月24日にシンガポールで開かれたアセアン地域フォーラム(ARF)の外交長官会議で、韓国は金剛山観光客射殺事件を積極的にアピールするなど、国際社会が関心を持つために努力した。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面しかし、北朝鮮は8月3日にA4用紙3枚程度の「金剛山地区軍部隊の報道官」の特別談話を出し、韓国側の現場調査を拒否することや、金剛山に滞在している「必要のない」韓国側職員を追放すると宣言した。
その後、南北間対話は中断したままで、北朝鮮の韓国に対する一方的な誹謗だけが続いている。金剛山観光客射殺事件はまだ終わっていない。
◆難しい金剛山観光の再開
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面韓国政府は金剛山観光客射殺事件と南北関係は別の問題として対応する方針だった。 金剛山観光客射殺事件を他の問題に拡大させないという意味だ。
金剛山観光客射殺事件も対話で解決しなければならない。南北関係が梗塞してしまうと、現政権が窓口を閉ざしたようなことになってしまうからだ。
事件が起きた日に、李明博大統領も事件のことを知った上で国会の演説を行ったが、北朝鮮に対話を提案した。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面韓国政府のこうした積極的な努力にもかかわらず、北朝鮮はミサイルを発射して核実験を行い、更に開城工業団地の韓国人労働者を拘束するなど、南北関係を悪化させることばかり行っている。金剛山観光客射殺事件も解決できないまま1年が過ぎてしまった。
金剛山観光の事業者である現代アサンも危機にさらされている。昨年7月に金剛山観光が中止され、11月28日には開城観光まで中止された。現代アサンの売り上げの損失は金剛山観光が142億9900万ウォン、開城観光が123億7900万ウォン、合計1536億7800ウォンに及ぶ。
昨年10月以後、社員に給料も支払えなかったが、最近やっと払えるようになったそうだ。そのため、現代アサンは会社を挙げて金剛山観光の再開のために最善を尽くしているという。
現代アサンのチョ・コンシク社長は7日に、「多くの人が金剛山観光の再開など南北経済協力事業を悲観的に思っているようだが、わずか1%の可能性だけでもあれば、我々は諦めない」と語った。現代アサンのヒョン・ジョンウン会長も社員の談合大会で、「1人だけでも観光客がいれば、金剛山観光は続ける」と話した。現代側は、開城工業団地で拘束されている職員の問題が解決できれば、パク・ワンジャさんの金剛山観光客射殺事件も政治的に解決できると見ている。そのため、開城工業団地の拘束問題の解決に最善を尽くしつつ、金剛山観光客射殺事件の解決方法を探っている。
◆北朝鮮がわがままをやめれば、解決方法も見つかるだろう
問題の核心は北朝鮮のわがままぶりだ。
これまで北朝鮮は韓国の態度が気に食わないと、南北対話を中断したり、武力示威をしたりしてきた。太陽政策がとられていた過去の10年間にも、「黄海での挑発」が2回もあった。李明博政権が発足してからは、韓国に対する攻勢や韓国国内の親北朝鮮団体を動員した反政府闘争を続けている。
実際に、金剛山観光客射殺事件の直後に韓国政府が観光の中止を発表すると、北朝鮮は事業者であるミョン・スンジ総合開発指導局を前に立たせて、「我々に対する挑戦だ。我慢できない冒涜だ」と言いながら、韓国に謝罪を要求した。そして「韓国の観光客は受け入れない」というあり得ない態度を見せた。
北朝鮮にとって金剛山観光は、「将軍様からの恩恵」だ。そのため、韓国からの観光中止発浮ヘ金正日に対する冒涜であり、挑戦でもある。欠点無しの社会主義を主張してきた北朝鮮が金剛山観光客射殺事件に対して謝罪するのは難しいだろう。
だが、国際社会の対北制裁のため、北朝鮮が保有しているドルがもう無くなってきている。現代アサンが98年に金剛山観光を始めてから観光の対価として北朝鮮に支払った金額は99年には2億600万ドルだったが、今年の6月までで合計4億8657万1360ドルに達する。
ドルが欲しい北朝鮮が、韓国の調査団を受け入れる程度で事件を片付け、観光の再開に合意する可能性もある。しかし、後継者問題で対内外的に緊張を高めてきた北朝鮮は、簡単に譲らないだろうという意見も多い。