北朝鮮で米代はまさに民心である。
食糧問題の解決が急がれる中、米の価格の上昇で、住民たちの憂いは倍に増えている。今年の水害で生産量が減ると、米の価格への影響を心配する声が出始めた。
今年の北朝鮮国内の食糧不足の事態は、どのくらい深刻になるだろうか?
農村進興庁は今年、北朝鮮が448万トンの食糧を生産したと推定した。去年の夏に平安南道と黄海南道の一部地域で起きた水害で、13万トン程度、米の生産量が減少したと分析している。WFPも約430万トンであると見通した。
一方、国内のある対北支援団体は、北朝鮮の農業生産量を280万トンに推正し、150万トン以上の外部の支援がなければ、今年深刻な食糧危機が来ると発表した。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面対北支援団体の憂慮と異なり、北朝鮮の食料事情は現在、比較的安定している方だ。来年の食料事情を心配する声が出ているが、まだ北朝鮮市場の反応はない。全て、水害で農業に影響が出て、援助が減り、価格が上がるはずだという漠然とした考えである。
米の価格は秋に上がった水準を持続的に維持している。現在、新義州を含めた大都市地域の米の価格は、去年の12月を基準にして、平均900ウォン~1100ウォン、とうもろこしは350ウォン~400ウォン代を維持している。
今年の春窮期、大餓死の見込みは非現実的
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面北朝鮮の食糧価格の安定には、住民たちの小土地(畑) 農業も大きい役割を果たしていると思われる。小土地で耕作する住民も少なからずおり、ここで生産される生産量は、地域ごとに少し違いはあるが、一世帯当り少なくとも500キロ、多い時は1トン程度のとうもろこしや栗、豆などを自分で生産している。
過去に金日成は食糧5百万トンあれば住民に食糧を配給し、全国の食料加工工場を充分に運営することができると言ってきた。北朝鮮内部では、通常一日の最小食糧供給量を1万トン程と見ている。
WFPと韓国の農村振興庁の統計により、北朝鮮の食糧生産量が440万トン程度ならば、90年代中盤のような大量餓死や大量の脱北事態は発生しない。400万トンは北朝鮮住民1人当り、1日平均550g 以上を供給することができる量である。更に、中国の援助と中朝貿易を通じた米の流入(合法・非合法含む)もありえる。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面配給制が崩壊した後、個人で生きる方法を悟った北朝鮮の住民は、活発な個人商売と小土地農業を通じて、今よりも困難な条件下でも耐えることができる「実力」を育ててきた。しかし、去年に比べて食料事情が悪くなることは事実であるだけに、住民たちの生存への闘いは一層厳しくなる見込みである。
核実験への反応もまちまちの北朝鮮民心
核実験後、北朝鮮の民心は大きく2つに分けて見られる。北朝鮮の権力層と軍部、貿易や商売でかなりの現金を集めた富裕な人々(特権階層)を含む上流層は、核実験後、自信感が高まったように思われる。
北朝鮮政権の運命に対しても、楽観的な評価が出る。金正日が核に固執した理由をそのまま見せてくれる証拠ともとれる。
中国丹東に出ている北朝鮮貿易業者のキム・ヘジュン(仮名・41) さんは、“核実験と核武装でアメリカとの対決で勝つことができる”と言った。“これからは怖いものもない”とまで話した。
これとは反対に、一日稼いで一日暮す一般の住民は、訳もなく騷がしいという反応だ。市場で個人の売台を持って工業品や食料品を売り、余裕もわずかな生活を送る住民たち、地方で小土地農業で暮らしている農民と労働者たちは、核実験には何らの関心がない。
清津で市場の売台を運営するハン・キョンヒ(仮名・42歳) さんは、“私たちみたいな人々はただ、生活の中で米の価格が上がらないことが重要。核実験に何の意味があるのだろう”と語った。
彼らが打ち明ける北朝鮮の内部事情は、口だけのものではない。ハンさんは、 “今まで10年以上、祝日以外には電燈なしで住む私たちは、日が昇れば起きて日が暮れれば寝床に入る”と語った。ハンさんは “日が暮れれば電気も焚くものもなしにやっと暮らして、牛や豚と何が違うのか分からない”と言った。
咸北会寧市場で麺を売るイ某さんは、“生きているから暮らしている。生きていたら飢え死にしないために何でもしなければならないじゃないか”と言った。 更に、“一日一日暮らすために、必死に堪えている”と伝えた。
2007年 北朝鮮の民心は相変らず鋭い
90年以後、‘苦難の行軍’を経て10年以上続く経済難に、北朝鮮の住民たちは疲れ果てている。飢餓状態から脱して10年前のような極端な状況ではないが、体制に対する不満は年ごとに増している。
北朝鮮の民心も地域によって事情が異なる。「苦難の行軍」の時期に、平安道と黄海道では咸鏡道に比べて餓死者が比較的少なかった。平壌と近い平安道と黄海道地域は北朝鮮の重要な米の生産地域で、咸鏡道に比べて食料事情がずっと良い方だ。
上の資料で見られるように、韓国と国際農業機関(FAO)を通じて、95年から98年にかけて、毎年平均200万トンに近い食糧が北朝鮮に支援された。しかし、不幸にも支援が一番多い日に死亡者も一番多く発生している。
咸鏡道は平安道に比べて政府に対してより露骨に反感を現わす。2000年以後、たゆまぬ対北支援の恩恵を一番多く受けた平安道は他の地域に比べてよい方だ。北朝鮮の住民たちの不満が爆発する地域は、咸鏡道である可能性が高い。
2007年にも対北制裁が続いたら、北朝鮮政府は外貨不足に苦しむ可能性がある。政府は住民たちを外貨稼ぎに総動員する可能性もある。これは、生計問題に喘ぐ北朝鮮住民の不満を高めることになるだろう。
この間、金正日の盾になった北朝鮮の幹部間にも、統治資金が不足すれば亀裂の兆候が現れる可能性もある。北朝鮮の核実験などで、指導部は爽快感を味わったかもしれないが、自らを縛りつけるブーメランになる可能性もある。
核問題が解決されなかったら、2007年は北朝鮮の住民にとって苦しい一年になるだろう。”もし配給がなかった時のように飢え死にするようであれば、これ以上黙っていられるだろうか”と内部消息筋は伝える。
去年の11月に発生した南門市場商人の集団抗議事態は、このように悪化した民心が、あることをきっかけに集団抗議に発展する可能性もあるという事実を如実に見せてくれている。もちろん、このようなデモは偶然的要素が強く、政治的性向を帯びてはいない。
軍隊と政権機関の権威が崩れたという条件下では、このような状況が発生する可能性は一層大きくなると見られる。このような偶然的な生活型抗議デモが、集団騒動に発展する可能性も排除することができない。<終り>