米国の国務省と財務省外国資産管理局(OFAC)は8日、北朝鮮による武器取引と違法資金調達にかかわったとして、北朝鮮の4団体と6個人を制裁対象に追加指定したと発表した。

指定された団体は、北朝鮮の弾道ミサイル部隊を統括する「朝鮮人民軍戦略軍」と、海運会社3社。

そして個人は、ロシアやシリア、ベトナムなどで活動する銀行の駐在代表らだ。

戦略軍は「賑やかし」

日本のマスコミはどちらかというと、戦略軍への制裁指定に注目しているようだ。名前がゴツくてタイトルが映えるからだろうが、一方で個人の素性にはほとんど触れていないメディアもある。

しかし、それ自体が商売を行っているわけでも海外で活動しているわけでもない戦略軍への制裁指定は、象徴的なもの、つまりは「賑やかし」程度のものと考えた方がよかろう。

より重要なのは、制裁指定された6人の方であると筆者は考える。

彼らの所属する銀行は、久しく前から制裁指定されている朝鮮鉱業開発貿易会社(KOMID)の活動に関わっているという。KOMIDは悪名高い武器商社であり、北朝鮮の財政を「ドル箱」として支えてきた。

そして、ロシアとシリア、ベトナムはいずれも、北朝鮮と軍事的に結びつきの強い国だ。北朝鮮はかつて、エジプトとシリアに空軍を派遣。中東戦争でイスラエル軍と戦っており、その後もシリアには様々な武器を販売している。

「抜け穴」警戒か

また、ベトナム戦争にも空軍を送り、米軍機26機を撃墜した歴史がある。

米国は、北朝鮮がこれらの国を「抜け穴」として武器取引を続けるのを警戒しているのかもしれない。

さらには、シリア内戦との関連も気になる。北朝鮮の金正恩第1書記はシリアのアサド大統領ときわめて親しい関係にあるからだ。

また、北朝鮮はシリアに対するロシアの軍事介入を強力に支持する一方、「シリアのテロ情勢悪化は米国の責任」であるなどと非難している。

米国が今回の制裁指定で、シリア情勢までをも念頭に置いている可能性はゼロではなかろう。

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記

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