筆者の姓は「高」だ。亡父は戦中に済州島から大阪へ渡ってきた。この島は狭いがゆえに、血縁の結びつきが強く、それぞれの「高家」の由来を記した「族譜」という家系図がある。もちろん高ヨンヒの族譜も入手し、調べ上げた。
勘のいい読者なら、もうおわかりかと思う。族譜を辿ると15世紀の先祖を始祖とする一派の家系図に、高ヨンヒの父・高ギョンテクと、筆者の亡父の名前が、同じ世代の欄にしっかりと記されていた。
つまり、筆者と金正恩は「家系図上」では遠縁にあたる。もっとも、筆者以上に金正恩と近い血縁関係にある在日朝鮮人が、今も日本に存在する。彼らは、とっくに自分たちと金正恩の関係に気づいている。
そう、済州島—大阪、そして平壌を結ぶ血脈は、決して消え去ることはないのだ。
(おわり/敬称略)
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(1)すべては帰国運動からはじまった
(2)偶像化に立ちはだかる実母「高ヨンヒ」
高英起(コウ・ヨンギ)
1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 、 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 、 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。