時は今から53年前、1962年10月18日だった。帰国後、高ギョンテクは、北朝鮮でも最低ランクと言われる咸鏡北道ミョンガンの化学工場の労働者として勤務することになる。
しかし、娘・高ヨンヒが万寿台芸術団に踊り子として入団し、金正日に見初められことをきっかけに、父娘の人生は大きく変わっていく。
そして、高ギョンテクが朝鮮画報に手記を寄せた翌年1973年、高ヨンヒは万寿台歌劇団のいくつかの演目の主役に抜擢され、日本に「凱旋帰国」を果たすのだ。
【連載】金正恩と大阪を結ぶ奇しき血脈(3)日本への「凱旋」と「国母」の夢
高英起(コウ・ヨンギ)
1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 、 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 、 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。