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北朝鮮で「出身成分」という言葉がある。いわゆる「身分」を指す言葉であり、出身成分に基づいた「身分制度」が今でも現存する。当局はその存在を決して認めようとしないが、多くの脱北者の証言により、その存在は明らかになっている。

土台或いは成分と呼ばれるこの身分は、北朝鮮に暮らす人に一生ついてまわる。就職、進学での差別的な扱いはもちろんのこと、政治集会などでも自分の身分を思い知らされる。

例えば、平壌の金日成広場に大勢の市民を動員して行われる「群衆大会」。先着順に適当に並べばいいというわけではない。立ち位置は、出身成分に従って一人一人が、細かく決められている。

両江道(リャンガンド)の住民が米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)に語ったところによると、「前から何列目、右から何番目」と、立ち位置が決められていて、勝手に移動することはできないという。

細かく決められていることから、欠席するとすぐに発覚し、後に厳しく叱責されることから、よほどの大病を患わない限りは這ってでも行かなければならない。

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また、当局が把握している自分の成分は知らない人でも、割り振られた立ち位置でなんとなくわかってしまう。金正第1書記が立つ「主席壇」の真正面は労働党員など「核心階層」が割り振られる。その後ろに「動揺階層」、金正恩氏から一番遠いところに立たされるのは「敵対階層」だ。

平壌の金日成広場での群衆集会のみならず、様々な政治行事で土台が問われる。咸鏡南道(ハムギョンナムド)の情報筋によると、金日成氏、金正日氏の銅像に花束を捧げる儀式では、その順番や花の大きさも成分によって決められる。

「敵対階層」に分類されている人の順番は後回しになり、忠誠心を示そうと大きな花束を捧げようとしても許されない。

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こうした北朝鮮当局のこのようなやり方に対して情報筋は「何時間も続く退屈な行事だが、後ろの方にいるとさほど緊張を強いられることもなく楽だ」とする一方で「国から見捨てられているので、気分のいいものではない」と述べた。

米国ワシントンの人権組織「北朝鮮人権委員会」の報告書によると、動揺階層、敵対階層に分類されている人は北朝鮮全人口の72%に達する。

市場経済の発展により、財力を手にしたトンジュ(金主、新興富裕層)が、成分の壁を乗り越えるようになりつつあり、以前ほどは成分を厳しく問われないようになったようだ。しかし、身分制度が公式に廃止されたわけではない。

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「人民は皆平等」であるはずの社会主義国、北朝鮮の時代錯誤な身分制度は、人権侵害の根源だとして、国際社会からも批判されている。