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III.

言論の自由に限定されているが、韓国の民主主義が後退しているという主張を裏付ける国際社会の世論はない。特に、前に挙げた国際的な言論機関の資料を見ると、時局宣言が政治的に偏向しているという点は疑いの余地がない。つまり、理念の物差しで李明博政府を見ると、上に挙げた様々な事件が民主主義の後退の証拠と信じられていて、このような集団的な信頼がそのまま事実として見なされる状況であるということだ。

この点は、去年のキャンドルデモでもほとんど同じような国「で現われた現象だった。それぞれの事実を客観的に冷静に判断すれば、米国産牛肉の危険性とは全く無関係だが、いくつかを集めて米国産牛肉をほとんど毒物のレベルで認識させる相乗作用を、左派の知識人や市民団体は意図的に繰り返し利用した。

だが、韓国の民主主義後退論が狂牛病の波動と違う点は、民主主義の水準に対しては国民がそれなりに体験的に判断できるという事実だ。まさにこうした理由から、科学の領域に属する狂牛病とは違い、主観的な判断が深く介入している韓国の民主主義後退論が、国民を説得することができないでいるのだ。左派の知識人や政治家、市民団体と宗教家の希望とは異なり、6月9日に市役所前広場で開かれた夜間キャンドルデモに参加した市民たちの数は、去年と比べて相対的に少なかった。

IV.

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もう一方で、韓国人特有の早期忘却症にかからない人ならば、民主主義後退論あるいは民主主義危機論は、ヨンサン惨事や報道人の逮捕、盧武鉉前大統領の死亡前に提起されていたという事実を憶えているだろう。去年のキャンドルデモの初期から民主主義危機論が頭をもたげて、直接民主主義が求められていると主張された。つまり、「キャンドルが民主主義だ」ということである。

ここで注目すべき点は、去年のキャンドルデモ以後の金大中元大統領の発言と行動だ。彼は2008年7月3日にキョンヒャン新聞とのインタビューで、キャンドルデモについて「昔のギリシアのアテネであった直接民主主義がよみがえったのではないかという気がします (…) 一口で言うと、これは民主主義の発展の極点というか、最高の頂点に到逹した一つの形態と思います」と語った。それだけでなく、2009年1月1日に民主党所属の政治家たちの新年祝賀会で、3種類の危機論をあげた。

「去年1年間は、想像もできない光景の中に暮らした。今、私たちは民主主義、経済、南北関係という3大危機に直面している。今年最大の話題は民主主義で、インターネットを通じた知識の習得で統治能力を持った国民を、抑圧で治めようとすることは不可能だ。民主主義が大きな挑戦を受けているし、20~30年逆行するのではないかという恐れもある。今、権力を握って振り回す方たちは、私たちが拘束されて死刑を言い渡されて、拷問された時に何をしていたのか。独裁と戦った民主党の根性が現われているし、期待以上によくやっている」

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金大中元大統領は、李明博政府をはじめから「反民主主義政府」と規定して闘争することを念頭に置いていた。しかし、その目標がアメリカ発の金融危機のあおりを受けた経済危機の克服であるはずがない。むしろ、李明博政府が金大中・盧武鉉政権が金正日と合意した「6・15、10・4宣言」に対北政策を戻すと、李明博政府を圧迫するという意志は明らかだった。必要ならば現政府を「独裁」と規定して、去年のキャンドルデモのような大規模なデモを通じて植物的な状態にするということだ。

北朝鮮は今年4月に弾道ミサイルを発射して、その後すぐに2回目の核実験をした後、今までその存在を否定してきたウラン濃縮はもちろん、アメリカを核で攻撃するという発言も躊躇していない。だが、アメリカと韓国政府は北の脅しにびくともしなかったし、その代わりに中国とロシアの指示の下、国連安全保障理事会で満場一致で強硬な対北制裁案が通過した。

一方で、金大中元大統領は太陽政策を支持するアメリカの知人を総動員して、2008年12月に国際シンポジウムを組織するなど、オバマ政府の対北政策に影響を及ぼすために踏ん張っていた。しかしこのオバマ大望論が、金正日の傍若無人な核実験と国連制裁決議案で飛び散ると、再び彼の政治人生の危機がやって来たことを感知した。なぜならば、北朝鮮の金正日政権が崩壊すれば、彼の太陽政策はもちろん、韓国の親北左派の国家観、統一論やアイデンティティなどが根こそぎ崩れるのは明らかだからだ。

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金大中元大統領が直接影響を及ぼして、金正日の脱出口を開けてやることができる所は韓国以外にない。もし、李明博政府が去年のキャンドルデモのように再び植物的な状態に陷ったら、国連の対北圧迫政策への共助に大きな穴があいてしまうからだ。

そうした中、盧武鉉前大統領の自殺という前代未聞の事件が起こった。家族の収賄事件と関連して、被疑者として検察の調査を受けていた時だった。盧前大統領の支持者たちや彼の死を哀悼する国民の間に、前大統領の自殺に李明博政府の責任があるという感情的な判断が横行した。まさにこの瞬間を逃すことなく登場した金大中元大統領は「李明博独裁論」を掲げて、核とミサイル、そして戦争の脅威という「つち」を振り回す金正日に、韓国政府の背に「鉄敷」をあてるも同様の仕事を自任して出たのだ。

にもかかわらず、韓国の左派がこうした妄想に近い主張をしているのは、彼らが21世紀の時代精神を理解できないからだ。彼らはまだ、海洋勢力と大陸勢力の角逐場である朝鮮半島という古い図式から脱することができていない。

それでは、現在の東北アジアの時代精神は何だろうか?

それは、北朝鮮の強制収容所で日々死と戦っている、自分の罪名が何なのかすら分からない政治犯たちと、世襲首領体制という時代錯誤的な狂気によって塗炭の苦しみを味わっている北朝鮮の人民を、東北アジアの国々が経済的な協力と政治的な善隣関係を通じて、一日も早く救出することだ。この点を通察すれば、朝鮮半島で巨悪の存在がどこにあり、時局宣言に参加した人たちの怒りと熱情が、どこに向かわなければならないのかということも明らかになるだろう。

[ホン・ソンM]