「地方幹部の頭を見ろ! パーマまでしやがって」
部下たちは、金正日氏が怒鳴った理由を即座に理解した。大紅湍郡の組職書記のヘアスタイルが問題だったのだ。
北朝鮮では、風変りなヘアスタイルを、「資本主義的な黄色物」と言って取り締まる。逮捕されれば労働鍛錬隊刑で強制労働の処罰を受ける。待ちに待った金正日氏と会ったキム書記は、握手もできないまま、護衛総局の兵士によって連行されて行った。
戦跡碑で金正日氏を迎える書記が逮捕され、関係者たちはどうしたらよいかの分からず混乱した。しかしその時、突然雰囲気が変わる。キム書記を追いやって振り向いた金正日総書記の顔が突然明るくなったのだ。
握った手を離さず
金正日氏は、自分に花束を渡すために待機していた女性講師を振り返って、にこやかにほほ笑んだ。そして、女性に近付き花束を受け取りながら話しかけた。