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最近、北朝鮮の金正雲の後継問題に関する報道には、小説のような話が多い。6月18日に中国政府の秦剛外務省報道官が、金正雲が極秘に中国を訪問したと朝日新聞が報道したことに対して、007の小説のようだと批判した。だが、小説のような話は日本の新聞にだけあるわけではないと思われる。

韓国にもある。代表的な内容が、6月21日にジョインスドットコムに掲載されたチャン・ソンミン氏(元民主党国会議員、朝鮮半島戦略家)の文章、「金正雲後継説はヒラリーの発言のため」というものだ。チャン氏は似たような内容のインタビューを、6月17日に平和放送で受けている。

チャン氏の主張は金正雲後継説は、北朝鮮は実際に後継者を準備しているのではなく、アメリカとの核交渉を早期に終わらせるための核交渉用カードであるというものだ。

「金正雲後継説を、25歳の若い子供の後継説を立てて、北朝鮮が今政治的に不安定な状況に陥っているということを、今アメリカに投げかけて、できるだけ金正日委員長の安定した体制の下で、北朝鮮の核問題を早期に解決しなければならない…。

そのため、北朝鮮自らが後継説を流布して、北朝鮮が後継告}の過程で政治的な不安に陥れば、核兵器の統制も不確実な状況になる可能性があるという信号をアメリカに送っているのである。金正雲後継説は、まさにこうした過程で北朝鮮の対米戦略の次元で出てきたものであって、後継体制を構築するための本質的な計画の下で出た問題と見るのが難しい側面が多い」

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このように北朝鮮は、金正雲後継説をしきりに流したら、アメリカは今後、北朝鮮の権力の不確実性が一層高まる前に、時間を繰り上げて北朝鮮との核交渉を終わらせるはずだと期待しているというのだ。これがチャン氏の分析のポイントだ。

この分析の根拠として、チャン氏は2つの主張をしている。

1つ目に、北朝鮮は金正雲が後継者という話を1回も公式にしていないということだ。

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「今まで北から流れて来た金正雲後継説は、全て間接話法で隠喩的、比喩的な表現が全部だ。北側は金正雲が後継者という言葉をたった1回も公式に言っていない。ただ、誰が見ても金正雲が後継者になることはほとんど確かだという程度の推測をさせるために、対外的な宣伝戦術を繰り広げているだけ…。そのため、後継説は金正雲を後継者として本格的に擁立するための次元のものというよりは、アメリカの気を引くための対米戦略の次元で動員されたカード………」

2つ目が、後継説が流れ出た時点が、北朝鮮が衛星ロケットの試験発射と2回目の核実験をした後ということだ。そして、金正男が三男の金正雲が後継するという事実を確認したのが、事実上北朝鮮が唯一公式に確認したことだが、その時期も2回目の核実験の後の6月で、これも額面通り信じることはできないと主張している。

けれどもチャン氏の主張には、おかしな部分がいくつかある。

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まずチャン氏には、北朝鮮の後継の過程がどのようなものなのかということに関する、基本的な理解が欠けている。北朝鮮は金正日が父親の金日成の権力を継承した過程でも、かなり長い期間、秘密主義の原則に固守した。北朝鮮が、金正日が後継者であることを対外的に公式に知らせたのは、80年の第6回党大会の時だった。これは金正日が74年2月に党の第5期第8回全員会議で後継者に確定してから6年後のことだった。

つまり、金正日が後継者に内定した74年から対外的に公式に発表された80年まで、後継者金正日は、一般の住民にあまり知られていなかった。党の幹部や勘が鋭い住民が、金正日が後継者であることを認知していたに過ぎなかった。

つまり、北朝鮮は後継者を対外的に公式発表する前に、かなり長い間緻密に水面下で準備するということだ。後継者を外に発表していなくても、後継者を準備していないという意味では決してない。

今、金正雲も同様だ。北朝鮮は対外的に公式に発表していないが、内部では後継者の継承作業が活発に行われている。様々な報道や独自の内部消息を総合して見ると、金正雲は今年の初めに既に後継者に内定していた。そうして4月までは金正日の息子を「親愛する金将軍」と呼びなさいという労働党の決定が下った。権力世襲を幹部たちに知らせたのだ。

5月初め以降は、金正雲の名前をあげて「金正雲同志の領導によって、党の唯一思想体系を確固として立てて、強盛大国建設の大門をぱっと開こう」という題の講演が、軍と民間機関の一般の党員を対象に行われている。金正雲が後継者に確定したことを、内部では公式に知らせているのである。こうした事実から、北朝鮮が今年に入って金正雲を後継者に推戴するための水面下の作業を、非常に早い速度で進めていることが分かる。

したがって、チャン氏の主張のように、「北朝鮮が金正雲が後継者になるという事実を公式に発表しなかったから、後継説は金正雲を後継者として本格的に擁立するための次元のものというよりは、アメリカの気を引くための対米戦略の次元で動員されたカード」と考えることは、それこそ自分の当て推量に過ぎない。論理を無理やり作るために、歴史的な事実を無視している。

2つ目にチャン氏は「金正雲後継説は核交渉カード」という分析を正当化するために、後継説が出た時点がミサイルと2回目の核実験が終わった後だと述べている。

だが、これも実際には歪曲だ。韓国で金正雲後継説が初めて知られたのは1月15日の聯合ニュースの報道だった。その後、北朝鮮の内部情報を扱う様々な機関誌も、2、3月に金正雲後継関連のニュースを報道した。そして時間が経つにつれ、金正雲に関する消息は増加した。

最近、金正雲が後継するという話に全世界のメディアの関心が一斉に向けられたきっかけは、6月1日に国情院が国会の情報委員たちに、金正雲が後継するという事実を確認したからだ。国情院という公式機関の確認があったから、メジャー級の言論会社が先を争って金正雲の後継問題を取り上げた。だが実際は、それ以前の今年の1月から、金正雲の後継に関するニュースは出ていた。

こうした事実から、チャン・ソンミン氏が金正雲の後継関連ニュースが、2回目の核実験の後に出るようになったと言ったのは、自身が金正雲関連の消息をきちんと確認していないことを証明したことになる。つまりチャン氏は自分の結論、すなわち「金正雲の後継は核交渉カード」という分析のために、様々な論理を合わせようとして、5月前にも金正雲の後継問題に関するメディアの報道がいろいろとあったという事実から目をそらしてしまったのだった。

チャン・ソンミン氏の主張のポイントは、今後北朝鮮が金正日の後継問題をどのように扱うのかということに対する予測だ。チャン氏は6月17日に平和放送とのインタビューで、金正雲後継説は核交渉カードに過ぎないため、このカードは特に効果がないと判断されれば、北朝鮮は金正雲後継説をそれ以上流さないだろうと予測している。そのため、金正雲後継説は今後減るだろうと見ている。

だが、本当にそうだろうか。北朝鮮は今年初めに金正雲が後継するという方針を定めた後、6月現在、軍隊や保衛部、労働党の高位幹部はもちろん、地方の幹部や党員にも金正雲の後継は既成事実だと伝えている。金正雲を称える歌も登場した。こうした状況が続けば、金正雲の後継は早ければ来年の党大会で、または遅くとも2012年には対外的に公式に伝えられる可能性が高い。

脳卒中で悪化した金正日の健康を考慮すれば、なおさらそのように思われてくる。そうなれば、金正雲を後継者に推戴するための水面下の作業にも一層拍車がかかるだろう。金正雲の後継問題に関する消息は、当然より頻繁にメディアに登場するようになるだろう。

チャン氏はどうして歴史的な事実を無視して、現在出ているファクトも歪曲して、小説のような論理を作るのだろうか。

最も重要な理由は、「北朝鮮の核問題は対米交渉用」という、かなり古い神話にまだとらわれているからではないかと思われる。金大中、盧武鉉政府をはじめとし、韓国は「北朝鮮の核は交渉で廃棄できる」という偽りの神話に首を縛られて、10年以上を無駄にしてしまった。10年以上の間、北朝鮮は一方では交渉するふりをしながら、もう一方では核能力の強化に拍車をかけてきた。そうして、今や公然と核保有国であると叫び、自分たちには核軍縮の交渉はあるが、核廃棄の交渉は無いと宣言している。

だが今でもまだ、韓国のチャン氏のような一部の専門家たちが、北朝鮮の核は交渉で充分に廃棄できるという幻想にとらわれているようだ。そのため、金正雲の後継問題のように、北朝鮮の中で実際に推進されている作業までも、対米核交渉戦術のための偽りの逆情報だと思いたがるのだ。

しかし、交渉のための偽りの逆情報は相手だけに流すものである。偽りの逆情報を味方にも流して内部をかく乱させるだろうか。チャン・ソンミン氏の論理どおりならば、金正日は今、味方におびただしい量の逆情報を流して、北朝鮮社会を深刻な混乱状態に陥れていることになる。北朝鮮はそこまで愚かではない。