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北朝鮮の新義州(シニジュ)市に位置する「新義州測定機械工場」。労働新聞は同工場を「最先端の測定機器を製造」としているが、その正体は中距離ミサイルの部品を作る最重要軍需工場の一つだ。

金正恩第1書記は9月3日、新義州測定機械工場を現地指導。その直後にとんでもない指示を下し、住民が猛反発していると米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が伝えている。

新義州(シニジュ)市民によると、金正恩氏は303工場のすぐ隣にあるマンションの部屋の入れ替え作業を行えと指示した。

正恩氏の指示は、隣のマンションの上の階から工場が丸見え、つまり「保安上」の理由で、上の階に住んでいる一般住民を下の階に移動させ、空いた部屋には工場の従業員を住まわせろというもの。早速移住作業が始まったものの、移住対象の72戸のうち、移住が済んだのは10戸に留まっている。それは住民が猛反発しているからだ。

北朝鮮では、中低層マンションの場合は上の階の方が値段が高い。景色がいいだけではなく、泥棒よけにもなるからだ。

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RFAは、住民がどのようにしてマンションの部屋を手に入れたかは明らかにしていないが、ここまで反発が大きいことを考えると、おカネを払って購入した人が多いと思われる。

ちなみに、工場のある南新義州のマンション価格は5000ドル台。そんな大きな資産を失うことになるのに、移住に際しては何ら金銭的な補償はないとあれば、住民が猛反発するのも無理はない。現地当局も、住民への対応に苦慮しているようだ。

別の新義州市民によると、この事態に、労働党のリ・マンゴン平安北道(ピョンアンブクト)責任秘書が現地を訪れ、住民を半分なだめつつ半分脅迫して移住を進めようとしている。

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ところが「元帥様(金正恩氏)は人民愛、人民第一主義を強調なさったいるというのに、これが人民愛で人民第一主義なのか」と猛抗議されたという。

「移住せよ」という最高指導者の指示に背けば、反逆罪で即連行されてもおかしくない。しかし、幹部も金正恩氏の指示の理不尽さを理解してか、或いは話が市中に広がって騒ぎになることを恐れてか、そんな抗議の声を聞かないふりをすることで、問題化を避けているようだ。

また、「最高尊厳は金正恩氏ではなくトンジュ(新興富裕層)」だという笑い話が示すように、一銭の得にもならない金正恩氏より財産を大事にする風潮が広まっていることも意味する。

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一連の事態は、金正恩氏が「私有財産権」という概念をあまり理解していないか、理解していても無視していることを示していると言えよう。金正恩氏は、私有財産がきちんと保護されない状態では海外からの投資など見込めないことを理解すべきだ。