2000年頃、中朝国境で朝鮮人民軍に所属する軍人に話を聞いた時のことだ。脱北者ではなく、中朝を往来しながら何らかの工作活動をしていたようだが、その詳細についてはお互いの安全問題もあるから一切触れなかった。
話のなかで、軍人は「自らが危ない場面に出くわしたら毒針を使うこともある」と述べた。にわかに信じられず、話半分に聞いていたのだが、北朝鮮の工作員が「毒針」を駆使することを改めて知る機会があった。
2006年に韓国・ソウルで黄長ヨプ(ファン・ジャンヨプ)氏にインタビューする機会があった。北朝鮮を亡命したなかでも最高幹部クラスだけに、非常に厳しいセキュリティチェックを受けた。この時、韓国のボディガードは、ボールペンの先をチェックした。筆者が「毒針ですか?」と問うと、ボディガードは「北朝鮮の工作員の常套手段だから」と教えてくれた。
2011年に韓国で対北朝鮮ビラ活動を行っている脱北者に対する殺人未遂事件が起きたのだが、容疑者は脱北者に偽装した工作員で毒針などを所持していた。