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3) 5月以後、金正雲の名前が少しずつ拡散

だが5月以後、後継者の名前が「金正雲」という事実が拡散している。開かれた北朝鮮通信によると、6月現在、金正雲の名前は主に軍隊や保衛部傘下の組職で広まっている。しかし、党の機関や内閣、一般の住民はまだ金正雲の名前を知らなかった。

「(6月)3日に咸鏡北道会寧市の国境警備隊の消息筋が、現在会寧の軍の将兵たちを対象に、金正雲が後継者に指定されたという事実が公開されたと伝えてきた。また、彼の偉大性と革命の業績に対する講演が行われているという。

軍の兵士たちの間では、金正雲に関する歌が広まり、隊列を作って行進する時に合唱している。そのため会寧市内の住民たちは、金正雲後継指定説は確かなことだと信じているという。

また両江道の内部消息筋は、恵山市の周辺に駐屯している北朝鮮軍の兵士たちも、金正雲の後継者指定と係わった、上部の講演を聞いたと伝えてきた。彼らは『偉大な金正日将軍様の思想と領導を全身で具現していらっしゃる、若い将軍金正雲同志が我々の革命武力を導いておられるので、我々は百戦百勝する』という内容の講演があったと話した」(開かれた北朝鮮通信第16号)

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だが同じ両江道でも、軍と保衛部を除けば、民間の党組職でも金正雲が後継するという事実をよく知らなかった。

「9日に両江道恵山市の党細胞書記によると、道内の教育機関である党組職では、金正日の後継問題に関するどのような党の指示や講演もなかったそうだ。この人によると恵山市で現在、金正日の後継者問題は軍や保衛部を中心に議論されているが、一般社会全般にわたる組織的な通知や講演などはないという」 (開かれた北朝鮮通信が6月9日に入手した情報)

こうした話から分かるように、6月までは金正雲が後継者になるという事実を、北朝鮮の全ての機関に知らせたわけではなさそうだ。軍隊や保衛部など、核心的な体制守護機関だけに知らせたと推測される。

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金正雲の後継問題は今年の1月に出始めて、徐々に北朝鮮の住民の間に広まっていることが分かる。こうしたことから、金正雲の後継問題は、まだ対外的に公式なものになってはいないが、北朝鮮の内部では徐々に公式なものになっていることが分かる。

4) 逆情報の可能性はないか?

金正雲の後継に関するこうした諜報に対して、一部では北朝鮮が流す逆情報である可能性も排除できないと主張されている。6月11日にアメリカ海軍分析センターの研究理事であるケン・ゴス氏は、RFAとのインタビューで、「北朝鮮が最後まで本当の後継者を保護するために、誤った情報を流した可能性を排除してはならない」と主張した。

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北朝鮮のような閉鎖社会の情報を分析して判断する専門家として、このように逆情報の可能性も一度省察してみることは必要だろう。だが、筆者はこれが逆情報である可能性はほとんどないと考えている。

北朝鮮の住民が金正雲が後継するという事実を知らずに、ただ外国だけで金正雲を後継者にするという話が流れていたら、これは逆情報である可能性も充分ある。しかし、上の文章にも見られるように、後継者が金正雲であるという話が北朝鮮の上層部はもちろん、一部の一般の住民にも拡散している。更に重要なことは、北朝鮮の当局がこれを取り締まっていないということだ。

北朝鮮では金正日の家族に関する話は超特急機密である。そのため、事実と異なったことがデマのように流布したら、それを流した人を必ず探し出して処罰する。後継者に関する情報は、北朝鮮の運命を決める消息だ。そのため、後継者に関するデマが流れたら、北朝鮮政府は必ず取り締まるはずだ。だが現在、北朝鮮の住民たちは金正雲が後継者であるという話が出回っていても、これを取り締まっていないから事実であると信じている。また、現在のような速さだったら、早ければ1年以内に金正雲が後継者になるという消息は、北朝鮮全域に広まるだろう。

北朝鮮は独裁国家だが、後継者のような重要な問題に対しては、最低限北朝鮮の住民の同意を求めるために事前の広報作業をする。北朝鮮の幹部と住民のほとんど全員が、金正雲が後継者になるのは事実であると信じていて、金正雲の歌まで広まっている状況で、ある日突然後継者は金正雲ではなく別の人だという主張が公式に出れば、北朝鮮の住民たちはひどく混乱するだろう。

そのため、金正雲が後継者になるという話が逆情報ならば、北朝鮮政府は今後、混乱と後遺症を防ぐために、少なくとも北朝鮮内部では金正雲が後継者になるという事実が拡散しないように内部の取り締まり作業を行わなければならない。けれども、北朝鮮政府の取り締まりの動きが見られないため、金正雲を後継者にするという事実は逆情報という主張は注意深い推測に過ぎず、根拠があるとは思えない。(終わり)