幹部たちの不満はあらゆる場面で見られるが、とりわけ電車のなかで体制批判が繰り広げられると情報筋は語る。
電力不足の北朝鮮では多発する停電によって電車が長時間にわたり停車するケースが多い。主要都市の住民の中には電車内で過ごす乗客向けに、酒や食べ物の「行商」をする人もいる。出張で地方へ出かける幹部たちが停電で足止めを食らうと、即席の「電車内宴会」が開かれるが、当局への不平・不満が酒の肴になるという。
「まずは、電車が停電のせいで動かないことから電力問題を取り上げて当局への不満を口にする。酒が進むと『白頭山発電所が完成したのに、なぜこんな有様なんだ』と愚痴りながら、最後は『我々(北朝鮮)はダメだ』と、嘆きながら体制を批判する」(内部情報筋)
停電した電車には、売り子の女性が乗り込んで麵類などの簡単な食べ物やお酒、湖水(ミネラルウォーター)も販売するが、ストリートチルドレンの「コチェビ」たちの売り子もいる。情報筋によると、彼らを見た幹部達は「こんなふうになってしまったのか」と議論をしながら「国家が食糧確保をしないからあんな子供(コチェビ)が出てくるのだ。商売しなければ餓死してしまうので仕方がない」と北朝鮮の現実を嘆く。
現在、韓国の国民統一放送、RFA、VOAなどが対北朝鮮ラジオを通じて、北朝鮮の現実を多角的に伝えているが、民衆だけでなく幹部たちの意識も変化させているようだ。