ちなみに、ナミビアで疑惑の目を向けられているのは、万寿台創作社の建設現場で働く労働者たちだ。アフリカで稼ぎまくってきた万寿台創作社は、北朝鮮でも有力な外貨稼ぎ機関だが、その傘下にある労働者たちでさえ、収入や衣食住の面で劣悪な環境にあることが、ナミビアの騒動からはうかがえるのだ。
特に、今年は10月10日に朝鮮労働党創立70周年を迎えたこともあり、金正恩氏は各機関に相当なムリをさせて、外貨をかき集めたのではないか。
そんな彼の目には、海外に派遣された労働者たちの惨状など見えるはずもない。何しろ正恩氏は、平壌でのドンチャン騒ぎを優先させるため、地方の人々が自分を見失うほどの飢餓地獄へと追い込んだ前科の持ち主なのだから。
高英起(コウ・ヨンギ)
1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 、 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 、 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。