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生産が進むと幹部たちは「家内班」(計画された製品以外に、注文をとって製品を生産する単位)を利用して注文して、靴を作って自分たちの懐を満たす。だが労働者たちは、盗まなければ何の利益も得られない。

労働者たちは生産期間に生ゴムや作りかけの製品、完成品を一足だけでも抜き取って、外に持って行って個人の商人たちに売れば、足りない食糧を買って食べることもできるため、生産期間には目に「月」がのぼるほど一生懸命になり、生産品を抜き取るために熱をあげる。

靴工場は「飛びちる埃もお金」と言われるほど、副収入の手段が多い。最初の工程である準備職場では生ゴムを、次の工程のゴムロ−ル職場や裁断職場では材料(ゴムテープや靴の生地)を、完成の工程であるビニール職場やプレス職場、長靴職場などでは完成した製品を、文字通り死に物狂いで盗もうとする。

工場の周辺に住む子供たちまで工場の後門から入って来て、石灰石を盗もうとして見付かる事件も頻発する。

一番儲かるのは生ゴムだ。時期によって1キロ当り350~500ウォン前後で売れる。労働者たちは、警備隊を引き込んで「生ゴム運び」に全力を尽くす。

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そうして出回った材料は、靴を作る個人業者が買っていく。新義州の靴工場に近いバンジク洞やチンソン洞、ドンチュン、ドンハ洞には、靴を専業として暮らしている個人の靴業者が多い。この人たちが作る靴の長所は、工場の靴よりも模様がきれいで安いことで、短所は工場の靴が3ヶ月もつとしたら、個人が生産したものはせいぜい1ヶ月しかもたないということだろう。

労働者たちは工場に働きに行くのではなく、「泥棒(資本主義とも言う)」するために出勤すると言っても過言ではない。工場の管理部や人民保安部、保衛部などの取り締まり機関だけでなく、党委員会や参謀部、工場の全ての幹部がぴったりとくっついて統制しても、とてもかなわない。労働者たちは、「資本主義行為」に自分や家族の命がかかっているからだ。

最初は生活のために始めるが、次第にお金の味を知るようになると、「お金儲け」のためだけにやるようになる労働者も多いという。

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ゴムロ−ル職場や裁断職場では大抵、底を外してテープを切って、靴の布の部分を裁断する時に抜き取る。

底は厚さが1.7?ならば、1~1.2?くらいになるように切って、残りで「資本主義」用の底を作って完成工程に売り、テープも同じように調節して売る。布は厚さの調節はできないので、規格よりも2~3cm小さく裁断して、残りの布地でやはり「資本主義」をして完成職場に売る。

底一組が5~7ウォン、布一組が地下足袋は35ウォン、運動靴や便利靴は60~70ウォンだ。これは昔の価格である。最近は、生ゴムが5千~7千ウォンで売れ、甚だしくは1万2千ウォンまで価格が上昇することもあるため、生ゴムで生活している人は大騒ぎする。工場の普通の靴を工場の外に持ち出せば、2500~5000ウォンで売れる。

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新しい生産体系が作られてから、政府が資材をまかなわずに、自分たちで原料を全て購入しなければならなくなった。生産できないため、資金が不足して資材の購入ができない。辛うじて、工場が自ら外貨稼ぎをして貯めた資金で生ゴムを買って来ても、みんなが「資本主義」に余念がないため、工場の財産は残らなくなってしまう。

完成工程では買い受けた作りかけの製品で靴を作って、警備隊と内通して工場の外で売る。完成職場の人の中には、作りかけの製品を買うためのお金も惜しんで、生産用に運ばれてきたゴムテープを規定どおりに唐轤ネいで、「不良品の山」を生産することもある。

靴はサイズごとにテープの規格が違うが、女性用の便利靴35号に唐驛eープの長さが120?だとしたら80~90?唐チて、残りのテープは切って、資本主義用の靴を作る時に使う。

工程ごとに勤労者たちがそれぞれ「資本主義」をするので、完成品が不良品になるのは当然だ。ほとんどの布やテープや底に問題が生じる。

国家の監督院の検閲を受けた工場が「生産中止」を命じられることもある。工場の幹部が労働者に対する取り締まりを強化して、検閲で摘発された労働者を「労働鍛錬隊」に送ることもある。

だが、工場に命をかけている労働者たちは眉一つ動かさない。それでは労働者だけがこのようなことをするのだろうか。いや、幹部はもっとひどいと脱北者たちは話している。

靴工場の労働者は、周囲の人にこう言っている。「幹部たちは注文だ何だと言って大っぴらに取っているが、俺たちは資本主義でもしなければ暮らせないじゃないか」と。

生産が始まれば幹部は家内班の注文は家内班の注文どおりして、担当する職場の幹部にも頼んでいる。労働者は数書ォ程度だが、幹部は普通、150足以上は取る。そのため、「幹部は大きな盗賊、労働者は小さな盗賊」という言葉が歌のように流れることになるのだ。

いつか労働者が何度も警備隊に取り締まられたあげく、2回「労働鍛錬隊」に行って来たことがあったが、担当の保安員が「やあ、こいつ。少しは静かに取っていけ。工場全体でやっても、かからない奴はかからないのに、お前はどうしてしょっちゅう見つかるんだ」と言ったそうだ。工場全体で品物を引き抜いていることを、自分からばらしているような話だ。

「人民の親」と言われている金正日が自分のことしか考えないため、人民も国家や党を信じることができずに、自分が生きることだけを考えるのは当然だろう。開城工団はこんな所に入って行ったため、盗みは最初から生産費として計上しておかなければ、損益勘定もくるうだろう。