北朝鮮の住民なら必ず持っているのが「生活総和」のノート。頻繁に行われる総和、つまり総括の際に提出するノートで「指示を守れなかった」「非社会主義的な行動を行った」などの内容を書き留めて、個人で管理する。
しかし、北朝鮮当局が最近になって「生活総和」ノートを個人ではなく、機関、工場、企業所などで管理するように方針を変更。さらに政治講演会の内容を書き留める「講演会ノート」についても取りやめる指示を下したと米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。背景に何があるのか。
従来、講演会で話された内容はノートに書き留め、労働党や勤労団体の検閲(検査)の際には、生活総和ノート、金日成、金正日労作(著書)学習ノートと合わせて提出する義務があった。講演会ノートには、開催日時、講演のタイトル、講師の名前、講演の主な内容などを記載しなければならない。北朝鮮当局はノートをチェックして思想教育にどれだけ熱心に臨んでいるかを評価する尺度としていた。
朝鮮労働党の中央委員会は昨年5月、「生活総和ノートは個人ではなく、人民班(町内会)、機関、工場、企業所が保管せよ」という指示を下したが、最近に入って「党が主催する政治講演会のノートも廃止せよ」という指示も下した。
咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋によると、指示の具体的な内容は「今後は講演会の内容は聞いて覚えよ。絶対にノートに書き留めるな」というものだ。こうしたノートは、住民にとって大きな負担だったことから、今回の廃止令を歓迎する声が上がっている。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面歓迎されるノート廃止の指示だが、北朝鮮当局の本当の狙いは「情報流出を防ぐため」だと咸鏡南道(ハムギョンナムド)の別の情報筋は指摘する。
「指示文には『個人の便宜を図るために、面倒な講演会ノートを廃止する』と書かれていたが、そんな理由を信じる人は誰もいない。指示を知らずに、講演会でノートを取ってしまう人もいるが、当局に呼び出され『なぜノートを取るのか』と取り調べを受ける。情報が外に漏れるのを警戒しているのは見え見えだ」
これまで、講演会ノートが様々なルートで国外に持ちだされ、メディアなどを通じて公開されることが度々起きている。講演会では、海外には知られてはならない内容もあるため、機密保持のためにノートを廃止したわけだ。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面「外部に情報を流出させた者は厳罰に処す」という内容の講演会の内容が、外部に流出して報道される有様なので、当局が警戒するのも無理のない話だ。