朝鮮語には日本語同様に「敬語」や「タメ語」が存在する。韓国も北朝鮮も同じ朝鮮語を使っているが、敬語の使い方には微妙な差がある。

例えば韓国では、きちんとした店の従業員は、客が自分より年下であってもきちんと敬語を使う。

しかし「サービス」や「お客様は神様」という概念がなかった北朝鮮では、年下の客には「あんた、買うの?買わないの?」と、ぞんざいな言葉使いをするのが一般的だったが、そういった風潮も徐々に変わりつつあると平安北道(ピョンアンブクト)のデイリーNK内部情報筋が伝えてきた

「市場の商人は年下の客に対してはタメ語で接するのが一般的だったが、最近は事情が違う。例えば、50代の商人が20代の客に物を売る際に『安くしときますから、買ってくださいよ』と言った感じで敬語を使うようになった」(内部情報筋)

市場が拡大する北朝鮮では、商人も増加競争が激化。少しでも客を呼び込んで、商品を売るために、敬語を使うようになったという。また、韓流ドラマが普及し、韓国での商人と客とのやり取りを目にする機会が増えたことも、北朝鮮商人の言葉遣いの変化に影響を与えているようだ。

保安員(警察官)や公務員など、権力を持った人が庶民に接する際も、できる限り敬語を使うように心がけているようだが、それには理由がある。今年、北朝鮮を初めて訪れた中国朝鮮族は次のように語った。

「列車が国境の新義州(シニジュ)駅に到着するや、税関職員が乗り込んできて検査が始まった。さぞかし横柄なのだろうと思っていたが、彼らは相手の年齢を問わず『書類を出してください』『その品物を見せてください』と敬語を使っていた。丁寧な態度とは言いがたいとはいえ、とりあえずは敬語を使っていることに驚いた」

北朝鮮では言葉遣いを一つ間違えると、トラブルの種になりかねない。以前は、傍若無人に振る舞っていた保安員でさえも襲われる事件がこのところ多発している。治安関係者も、下手に偉そうな態度を取れば庶民の報復を呼び起こしかねないと怖がっているようだ。

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