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先日、韓国の情報機関、国家情報院は国会に対する国政監査報告を行う中で、北朝鮮国民の意識変化を示す例として、北朝鮮の人々の間で流行っているひとつの「ジョーク」を盛り込んだ。

「わが国には党(朝鮮語でダン)がふたつある」というのが、それだ。

北朝鮮で「党(ダン)」と言えば、国家を支配する朝鮮労働党(チョソンロドンダン)のことを指す。一応、ほかにも党の名の付く団体はあるのだが、朝鮮労働党の「下っ端」に過ぎず、そんなものを「党(ダン)」と呼んで話題にする人はまずいない。

では、朝鮮労働党とは別の「党(ダン)」とは何かと言えば、北朝鮮全土で増殖する「自由市場(チャンマダン)」のことだ。末尾の発音を引っかけているわけだが、それだけチャンマダンが、北朝鮮社会で存在感を増していることが背景にある。

そして、人々はたとえば、こんな風に話しているという。

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「わが国には党(ダン)がふたつある。でも、チャンマダン(自由市場)はカネになるが、ロドンダン(労働党)は使い物にならない」

これは、北朝鮮の体制に対する痛烈な皮肉であり、同時に北朝鮮社会の変化の本質を表すものでもある。

北朝鮮では、久しく前に計画経済と配給制度が崩壊。国民を食わせられなくなった国家は、人々に自活させるため、なし崩し的に資本主義的な市場ビジネスを認めた。そして今や、経済の市場化の波は不可逆的になっている。

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それをこんなに短いジョークで言い表すとは、庶民の何と賢明なことか。この手のジョークは、他にも色々と聞こえてくる。

そもそも言論の自由が存在せず、体制を皮肉ることも許されなかった北朝鮮社会だが、それはオモテでの話。

そのウラ側で人々は、体制が内部引き締めのために繰り出す政治スローガンを、ことごとくブラックユーモアに変換してきた。

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また、「米国じいさんは、うちのじいさん(金日成)の160倍の価値がある」というジョークもある。正恩氏の祖父である故金日成主席の肖像画が印刷された北朝鮮ウォンの価値が、米ドルをはるかに下回っているのを揶揄したものだ。

こうして国家の最高指導者をジョークのネタにするなど、昔なら考えられなかったことだ。国情院が、北朝鮮国民の体制への忠誠度が「10分の1に下がった」と分析する所以である。

正恩氏はこうした風潮を、恐怖政治で取り締まろうと躍起に見える。処刑したスッポン工場支配人の動画を公開してみたり、側近たちを残虐な方法で公開処刑したりするのもそのためだろう。

ところが、北朝鮮の若者たちはそれですら、「4丁高射銃で撃たれてみるか?」というジョークにして笑い飛ばしている。「4丁高射機関銃」とは、玄永哲(ヒョン・ヨンチョル)前人民武力部長の公開処刑で使われた銃火器で、人間を文字通り「ミンチ」にする恐ろしいものだが、 北朝鮮国民がそれを恐れるよりもはるかに、正恩氏は国民のユーモアによって「裸の王様」にされることを恐れているのではなかろうか。