馬氏が姿を消す直前の10月には、金正恩氏に異議を唱えたとして15人の当局者が大口径の高射銃で処刑された。これは衛星画像によっても確認されているが、時期的に見ても、この粛清の嵐に巻き込まれたのではないか?との説もあった。
さらに今年4月末、「会議での居眠り」を理由に玄永哲元人民武力相(国防大臣)が、高射砲で人体が跡形もなく吹き飛ぶほどの方法で処刑されたことから、馬氏も処刑されている可能性が高いと見られていた。
その後の様々な情報を照らし合わせると、処刑されずに山奥へ追放されていたようだ。しかし、9月には中央への復帰を伝えられ、喜びのあまりショックで死亡したなどの情報も流れるが、今回姿を現したことで公式に追放処分が解かれたことが明らかになった。
金正恩氏が、馬氏の追放を解きさらに復帰させたのは、彼が力を入れる「北朝鮮式ハコモノ行政」に欠かせない人材だからだろう。加えて筆者は、国際社会に定着した「金正恩氏は残虐な指導者」というイメージを払拭させる狙いがあると見る。一度、粛清した人物を復帰させる「慈悲深い指導者」といったところか。