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北朝鮮政府の国境統制も日々強化されている。咸鏡北道穏城郡サンボン区の国境には、脱北者たちが川を渡ることを阻むために川辺のいたる所に釘を設置した落とし穴が掘られている。50メートルごとに置かれた国境警備隊の監視警戒所には、24時間北朝鮮の軍人がいる。北朝鮮政府はいつも、「非社会主義グループ」を結成して、国境の監視が効果的に展開されているか検閲している。

国境の検閲では、軍人たちェ脱北者から賄賂をもらって越境に目をつぶる行為が頻繁に見られるが、検閲が強化されて軍人が脱北者に要求する賄賂の金額も上昇した。2005年に、豆満江の主要なポイントの賄賂の費用が500~1000人民元だったが、今は3000人民元まで上がった。

北朝鮮内部の食糧状況が90年代の「大量餓死」ほどではなく、「長期的な飢饉」である点も、脱北が減少した一因と思われる。去年4月に咸鏡北道清津市の市場では、米1キロが北朝鮮の貨幤で4千ウォン(前年比 300%上昇)を超えるなど、食糧状況がかなり不安定だったが、今年に入り、2千ウォン台前半が続いている。

北朝鮮特有のインフレーションと、住民たちの自活力が増したことを勘案すれば、90年代の大量餓死のようなことが再び起こる兆しはないというのが、中国の現地にいる活動家たちの共通した見解である。

国境を越えるためには3000人民元必要

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それでは、今豆満江を渡っている脱北者たちはどのような目的で中国に渡って来るのだろうか。平安南道の鉱山で働いていたチェ・チュンソクさん(仮名.42歳)は、3月に妻と2人の息子を連れて川を渡った。チェさんは和竜の農村で農業を手伝って生計を立てている。朝鮮族と漢族が暮らしているこの村には、12世帯の家があるが、全員50代以上の人だ。

チェさんは日当として10~15人民元もらい、この村で働いている。村の人が、主人の家族が都市に移住した空き家でチェさんが暮らせるように手配してくれ、布団や家具もくれた。チェさんの家族は「決死の脱出」を敢行した。死ぬ時は中国に行って死ぬと覚悟を決めて、何の対策もなしに川を渡ったという。

「2年前に、妻がお金を稼ぐために中国に越えて来ました。あらゆる苦労をして、お金は稼ぐことができないまま捕まって戻って来たんです。妻を釈放させるために、友人や親戚にお金を借りました。朝鮮のお金で50万ウォンほど持って行きましたが返すあてがありませんでした。私が(鉱山で)いくら一生懸命働いても、トウモロコシの配給700gしかもらえない。

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他の家は女性が商売をしていますが、妻は労働鍛錬隊で体を壊して家で横になっているので、これ以上このような生活はできないと思って、そのまま中国に来ました。白黒テレビもタンスも全て市場で売って、お米のご飯を一度お腹一杯食べて、200人民元を持って豆満江を渡りました。死ぬか、そうでなければ気絶していたでしょう…」


中国にいる脱北者の性別の割合を見ると、女性が70~80%を占めている。女性は中国の男性と強制結婚させられたり、家政婦として働いたり、飲食業などに携わっているため、仕事と住まいを獲得する機会が男性よりも多い。だが、2005年から一家全員での脱北が目立つようになった。脱北者は北朝鮮社会を映す鏡だ。北朝鮮で「家計の破綻」を経験した人たちが、人生最後の選択肢として脱北の列に加わる。貧富の格差がひどくなり、社会競争で落伍する人がそれだけ増えているということの反証でもある。北朝鮮では、90年代後半に全ての人がお腹をすかせていたが、今は格差が深刻な問題になっている。(つづく)