北朝鮮の人民保安部(警察庁に相当)が、公式に認めた市場以外の露店に対する大々的な取り締まりに乗り出したと咸鏡南道(ハムギョンナムド)のデイリーNK内部情報筋が伝えてきた。

北朝鮮の地方都市の市場
北朝鮮のある地方都市。市場周辺にはこのように多くの露店が立ち並んでいる。

公式に認められた市場以外での露店は、原則的に禁じられているが、これまでは黙認されてきた。多くの住民が露天商で生計をたてているからだ。しかし、先月から取り締まりが強化されはじめたという。

「8月初め頃、『全国各地で横行している露店を無条件で禁止し、従わない場合には厳罰に処す』と書かれた布告が出され、保安署も取り締まりを強化している。各地域の保安署(警察)は、機動巡察隊を市場周辺に配備して物々しい雰囲気だ。露天商はほとんど姿を消した」(咸鏡南道の内部情報筋)

取り締まりのスキを狙って商売していることがバレると、時には暴力的に品物を押収され、「道端で雑貨や野菜などを売って食いつないできた老人や貧困層の主婦たちにとっては大打撃だ」と情報筋は語った。

露天商は、公式の市場で商売しようにも事実上不可能だ。売台(テナント)は限られており、売台使用料(テナント使用料)も必要だ。場所のいい売台にはプレミアがついて取引されているので、零細露天商にはとても手が出せない。

当局が、露天商の大々的な取り締まりに乗り出したのは、10月10日の労働党創建70周年記念日に向けての「環境整備」という理由がある。要するに「記念する日を迎えるにあたって、通りが露天商だらけなのは見苦しい」ということだ。

屋台や露店が「不衛生で、美観上よくない」という理由で禁止されたり規制されることは、どこの国でもありがちなことだ。しかし、北朝鮮では、より暴力的な形で規制されることから露天商、そして利用する住民からも不評を買っている。

「職場の道沿いでアイスクリーム、かき氷、飲み物を売っていた露店もなくなった。ひまわりの種、豆腐、野菜、タバコを売っていた老人たちも姿を消してしまった。不便で仕方ない」(情報筋)

当局の理不尽な取り締まりに対して、露店商の老人たちは集団で「なんてひどいことをするんだ!」などと保安員に抗議。なかには、「口では『人民愛』とか言っていたが、ついに本性を現した」と金正恩氏を露骨に非難する声も上がっているという。

今回の取り締まりは、露天商だけでなく、保安員たちも少なからず打撃を受けるだろう。露天商からのワイロは貴重な収入源だからだ。それでけなく、暴力的な取り締まりによって、後々住民から恨みを買うだろう。

結局、こうした取り締まり強化は、軋轢を生み出すだけであり、保安員と住民のどちらにとってもメリットはない。せいぜい金正恩氏が、「町がハイカラになって、カッコよくなった!」と喜ぶぐらいだろう。

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