韓国の民間対北ラジオ放送局の1つである「自由朝鮮放送」。自由朝鮮放送のイ・クァンベク代表は、いわゆる「転向した386世代」である。386世代とは、60年代に生まれて80年代に大学に通い、学生運動や民主化闘争に参加した世代のことである。学生運動の時代に、彼は刑務所に入ったことがある。だが、逮捕された理由は非常に面白い。
火炎瓶や鉄パイプを使ったからではなく、北朝鮮からの対韓ラジオ放送である「救国の声」を聞いて、それをメモしてパンフレットを作り、「統一先鋒隊」に参加した全国の大学生に配った罪で服役した。この話を聞くと、週末の人気バラエティー「福不福(運の良し悪しの程度、人の運を意味)」が思い浮かぶ。20代前半に金日成と主体思想に夢中だった熱血青年が、現在は対北民間ラジオ放送局の代表として活動している。
自由朝鮮放送という名前を聞いたことがある人は多分少ないだろう。イ代表は、「北朝鮮の人は自分たちを『北朝鮮の人』と言わず、『朝鮮の人』と言うから、朝鮮という名前を付けた」と名前の由来を説明した。北朝鮮で聞いている人を意識させるためには、彼らの表現や情緒を尊重すべきだという深い意味も盛り込まれている。
イ代表は「対北民間ラジオ放送局は、北朝鮮体制の変化を目指しているため、北朝鮮の人にとっては北朝鮮を誹謗する宣伝放送ではないかと誤解されやすい側面もある。私たちは北朝鮮で聞いている人の情緒や感性に合わせて、その人たちの代わりに意見を表明するメディアになりたい」と語った。
自由朝鮮放送は対北ラジオ放送の中で、唯一ラジオドラマを制作している。「事件と真実」、「金正日の仮想裁判所」などが、イ代譜皷氓オの自慢の番組だ。それ以外にも、北朝鮮の未来を模索する「論評」や「声明」、「時事番組」など様々な番組が編集されている。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面また、「北朝鮮の人に外部の世界の人から見た情報を伝える場合、情緒的な距離や用語が彼らに密着していないケースが多い。北朝鮮の人が最も重要だと思っている情報と、外部の世界の人にとって重要な事項や考えがかけ離れている」と説明した。
イ代表はその実例として、89年に訪朝して韓国と北朝鮮で大騒ぎを起こしたイム・スギョン氏のエピソードをあげた。当時韓国では、彼女が北朝鮮政権に利用されるのではないかと懸念したが、北朝鮮の住民は彼女を見て、「アメリカの植民地で餓えていた人なのに、なぜそんなに顔に肉が付いているのか」と不思議に思ったそうだ。北朝鮮の住民は普段接する情報の量が少ないため、意外とまっすぐで本質的な考えを持っている。
イ代表が考えている「ラジオ放送の効果」とはどういうものなのか。ラジオ放送は、ラジオさえ持っていれば、どこで誰でも持続的に外部の情報と接することができる。また、広い地域で不特定の人が聞けるというメリットもある。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面「北朝鮮の住民が耳で外部の世界の情報を得て、自分達の現実が自覚できるように手伝いたい。刑務所で自分の罪は償ったが、北朝鮮の人に対する心の借りはまだ残っている」とイ代表は謙遜した。
一方、まだ北朝鮮の影から抜けることができていない人には厳しく指摘した。
「昔、北朝鮮と主体思想を信じて学生運動をしていた人の中には、まだそれが嘘で、金正日個人の独裁や政権を維持するための手法だったということを認めていない人がいる。これも時代が生んだ悲劇だ」
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面
<自由朝鮮放送イ・クァンベク代表とのインタビュー>