北朝鮮当局が、奇妙な命令を出した。その命令とは「替え歌禁止令」。違反すれば厳しく取り締まる方針を示したと米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が伝えた。

平壌在住のRFAの情報筋は、「数日前に保衛部(秘密警察)から「革命歌謡『懐かしさは限りがない』の歌詞を歪曲して歌うなという緊急指示が下された。保衛部は、組織を総動員して首謀者の洗い出しにあたっている」と語った。

しかし、なぜ「懐かしさは限りがない」がNGなのか。まずは、当局が敏感に反応する歌のオリジナル歌詞の一部を見てみよう。

「懐かしさは限りがない」(2番)
うっとりする新しい通りを切り開けば またお会いできるだろうか
最先端の新工場を建てれば またお会いできるだろうか
将軍様をお迎えする日を待ち 燃え上がった一千万の心
今日も切なる懐かしさは限りがない

これは故金正日総書記の死を悼み懐かしむ歌だ。モランボン楽団のレパートリーでもあり、北朝鮮の人なら誰でも知っている有名な曲で、一時期は、当局も積極的に歌うことを推奨していた。

ところが現在、この歌の様々なバージョンの替え歌が流行している。代表的なものは「燃え上がった一千万の心」を「乾ききった一千万の心」と替えて歌うものだ。

この裏には、「金正恩氏は、父親の金正日氏と比べて全然ダメ」という風刺が込められている。平壌では、一部の青少年たちが学校の音楽室で公然と歌っていると情報筋は伝える。

替え歌が広がることを防ぎたい当局は、歌の選別作業を行っており、随時「替え歌禁止令」あるいは、歌そのものを歌うことを禁じる「歌唱禁止令」を出している。

1930年代に抗日パルチザンが歌っていた「自由平等歌」でさえ、歌唱禁止令が出されたという。

「人は名を持った瞬間から自由権を皆一様に有する」「自由権なしに生きるは死んだも同然」「命投げ出すとも自由投げ出すべからず」など、日本の植民地支配と闘う意識を高揚させる歌詞が、金正恩政権に歯向かう反体制意識を高めるおそれがあるというのが禁止の理由だ。

北朝鮮当局の措置に対して、米国在住の脱北者は「革命歌謡を禁止するなんて、金正恩氏は暇なのか。他にやることがないのか」 「父や祖父を称える歌を禁止するのは、その業績を否定するも同然。矛盾している」などと批判した。

北朝鮮当局は過去にも、金正日氏を称える歌「お会いしたい」、韓国の民主化運動の象徴となっている歌「朝露(アチミスル)」、朝鮮王朝時代の義賊を描いた映画「林巨正」の主題歌など様々な曲に対して「歌唱禁止令」や「替え歌禁止令」を出しているが、その実効性は不明だ。

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