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韓国の教育熱の高さは世界的に有名だ。あまりの過熱ぶりに80年代には塾や家庭教師が禁止されたが、実際には「ヤミの家庭教師」が横行した。

一方、市場経済が広がる北朝鮮でも教育熱は高まりつつある。当初は、公教育に物足りず、経済的に余裕がある新興富裕層(金主=トンジュ)の子息を中心に塾や家庭教師などの「私教育」が広まったが、これに対して北朝鮮当局は、何度も禁止令を下した。

しかし、当局の禁止令にもかかわらず、私教育マーケットは拡大し、今では庶民層も子どもを塾に通わせるようになったと平安南道(ピョンアンナムド)のデイリーNK内部情報筋が伝えてきた。

かつてと違い、最近ではその日暮らしをしている庶民でさえ、なけなしの財布の底をはたいて子どもたちを塾に通わせる。それも放課後に数時間通わせる程度のものではなく、学校を休ませて数ヶ月から数年単位でみっちりと勉強させる本格的なカリキュラムだ。

もちろん、長期の無断欠席は許されていないが、ここでもワイロを使った「裏ワザ」があった。まずは、学校を訪ねて担任教師や教務部の担当者にワイロを渡し「病気治療で長期入院」などの名目で欠席を認めてもらう。認められる期間は、ワイロの額次第。一般庶民なら3ヶ月から半年程度、トンジュなら1~2年は休ませることも可能だ。

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長期欠席が認められれば、次に子どもに何を習わせるかを決める。英語、中国語などの外国語学習からはじまって、書道、絵画などの芸術分野を習うことができる。さらに、アコーディオン、バイオリン、伝統舞踊も人気だ。

授業料は講師の実力により異なる。普通の講師なら、中国人民元で月100元(約2000円)、「カリスマ講師」になると月に150から200元(約3000~4000円)ほどで、マンツーマンの家庭教師になると1ヶ月に1000ドル(約12万円)を超える場合もある。

講師は、自宅の部屋に教室を構えるのが一般的だが、人気の高いカリスマ講師ともなると部屋を借りて塾を開く。子どもたちは毎日午前10時から午後5時までみっちりと教育を受ける。4~5人を同時に教える場合もある。超人気講師になると10人を超えることもある。

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しかし、「無償教育」であるはずの北朝鮮で、なぜ人々は高額の費用を払ってまで子どもを塾に通わせるのだろうか。

ほとんどの塾の講師は、元々は公立学校の教師だった。ところが、90年代後半からの深刻な経済難によって配給は途絶えて給料の遅配も頻繁に起こった。たまに、給料がもらえたとしてもコメ数キロ分にしかならず、とても生活できない。

そうしたなか、教師たちも家庭教師や塾の講師になって「私教育」ビジネスで生き残ることを考えたのだ。

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また、公立学校の質の低下も私教育が広がるきっかけとなった。

北朝鮮の教育の柱は政治・思想教育だ。しかし、公立学校で「偉大なる首領様の幼年期」「朝鮮革命史」をいくら学んでも市場経済化が進む北朝鮮では、まったく役に立たない。さらに、教育施設もお粗末だ。金正恩氏は、「教育施設を現代化せよ」と指示を下しているが、教育現場では予算が足りずに親に費用を押し付ける

現場では、献身的に努力する教育者もいるが、あまりにも国家が教育の責任を疎かにしていることから、北朝鮮の人々が公教育に背を向けるのも無理はないだろう。