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北朝鮮で、少子化が加速している。総人口が約2300万人と、アジアでは少ない部類に入る北朝鮮において、少子化による人口減少が国家に与えるダメージは大きい。何より、朝鮮人民軍の兵力減少につながるし、そうなれば軍が担う公共事業も停滞する。

こうした現状に業を煮やした金正恩氏は「今後、国家の幹部事業に子供の数を反映させよ」との指示を下した。これは、幹部は子供を作れば作るほど昇進で有利になることを意味し、「40代で子供3人」がノルマだとも言われる。

しかし、正恩氏がここまで言っても、少子化が解消に向かうかは微妙だ。

北朝鮮の少子化の原因は、慢性的な経済難だけでなく、その中で生じた人々の意識変化によるところが大きいとされる。

北朝鮮の女性らは、20代で結婚すると「早すぎる」と言われるため、30代になってから結婚するのが一般的だ。最近では、そもそも結婚しない人も増えているという。その主な理由は、女性が商売で忙しいからだ。

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北朝鮮国内の取材協力者が語る。

「北朝鮮の市場では、女性の商売人が主役。そのため少女から大人の女性に成長するに従い、『わたしも稼がなくちゃ』と考えるようになる人が多い。逆に言うと、妊娠と出産に時間をとられると商売の流行に乗り遅れ、貧困に陥ってしまうとの危機感もある」

ところが、そんな切実な事情を汲み取ろうとしない北朝鮮政府は、堕胎を厳しく取り締まっている。そしてそのことが、産婦人科医が個人宅に出向き内緒で堕胎手術を行うという、「ヤミ医者」稼業の温床になってもいる。

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もちろん、北朝鮮の女性たちとて最初から子供を産みたくないわけではない。経済力のある夫を持ち安定した生活を送ることができるなら、話は別なのだ。実際、既婚女性たちの間では最近、「うちのダンナは『従北』(甲斐性なし)なのよね。『最高尊厳』(金持ち)と結婚すりゃよかった」という、北朝鮮特有の符丁を使ったジョークが流行っているという。

問題の根源は、北朝鮮の女性たちが結婚や出産を選択できなくしている体制の欠陥がある。そのことに金正恩氏が1日も早く気付くことこそが、どんな出産奨励策よりも効果が大きいのではあるまいか。