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北朝鮮北部、中国との国境に面した両江道(リャンガンド)の恵山(ヘサン)で、朝鮮労働党の幹部や富裕層を狙った凶悪犯罪が相次いでいる。

今年3月に就任した道党(朝鮮労働党両江道委員会)のキム・ヒテク責任書記は、自らが主催した道党幹部会議で、国境地域の犯罪問題が取り上げているが、犯罪対策に苦慮しているという。

両江道のデイリーNK内部情報筋は、殺人や誘拐の頻発で、中央の検察所や人民保安省(警察庁)の検閲隊(監査班)が毎日のようにやって来るとし、幹部会議では「今年を様々な犯罪を根絶する年とし、犯罪者を一掃せよ」との指示が下されたとの話した。

警察署長宅に強盗

先月9日の夜、市内の恵長洞(へジャンドン)にある恵山駅保安署(警察署)の署長の家に強盗が押し入った。家にいたのは署長の義理の妹。署長は、人民保安省政治大学の半年間に及ぶ政治教育のため、平壌滞在中で、妻も夫に会うために平壌に行っていた。留守宅を預かっていた義理の妹は、縛り上げられた上で凶器で複数箇所を刺されて殺害された。

恵山市保安署は、最低2人が犯行に関わり、中にはこの義理の妹と面識のある人物が含まれていると見ている。

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事件が発生した地域では、保安員(警察官)だけではなく、労働者規察隊や非社会主義グループ(風紀取り締まり班)まで動員されて、凶悪犯罪を防ぐために監視の目を光られせているが、殺人事件は減っていないと情報筋は伝えた。

前回の事件から1週間後の先月16日には、市内の新興洞(シヌンドン)市場のそばに住んでいたペンキ商人の家に強盗が押し入り、妻と4歳の娘が殺害された。

脅迫犯罪の多発を受けて、市内に住む幹部や商人は、玄関の扉を鉄製に変えたり、防犯窓や警報装置を設置している。犯罪多発の背景について情報筋は、密輸の取り締まり強化があると指摘した。

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「密輸の取り締まりが厳しくなり、カネが稼げなくなったため、タチの悪い密輸業者が強盗をしている。商売がうまく行かないからと、一攫千金を狙う若者たちも犯罪に手を出すようになった」(情報筋)

犯罪多発に金正日氏もお手上げ?

また、恵山を含む国境に面した地域では、若い女性が犠牲になる人身売買や、脱北事件も多発している。

「今、カネになる密輸は麻薬と女しかない。若い女性一人を中国に売り払えば、4000元(約5万5000円)ほどもらえる。そのせいで、工業製品を扱っていた密輸業者が人身売買に走っている」(情報筋)

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人民班(町内会)では「若い女性は夜一人で出歩かないこと、昼間でも人気のない道では気をつけること」を注意喚起を行っている。

両江道の保衛部(秘密警察)が、中国から強制送還された女性を取り調べると、皆一様に「人身売買組織に拉致されて中国に連れて行かれた」と陳述するという。しかし、保衛部はこれら女性を処罰するばかりで、人身売買犯を逮捕するための捜査をしようとしないという。

情報筋によると、人身売買に関わっている密輸業者は、主に農村や他の地方から商売で来た女性を狙っているため、被害女性の証言だけでは捜査ができないという事情もあるという。

最高指導者ですら、両江道の犯罪の多さには匙を投げた模様だ。

「金正日総書記ですら、『両江道の青年がいなくても朝鮮革命はできる』と言うほど犯罪が多い。商売でも密輸でも、住民が食べていけるすべがあればいいのだが。とにかく生活が大変だから、犯罪も増える」(情報筋)

(参考記事:強盗を裁判抜きで銃殺する金正日流の治安対策