北朝鮮崩壊?

北朝鮮は、遠からず崩壊する――。

もう20年以上も前から言われ続けている言葉だが、それが現実のものとなる兆しは、これまでまったく見えてこなかった。しかし今度は、もしかしたら、もしかするかもしれない。

北朝鮮で、朝鮮人民軍や朝鮮労働党高官らの脱北が相次いでいるのだ。

些細なことで側近らを銃殺

韓国メディアは今月初め、北朝鮮のパク・スンウォン朝鮮人民軍上将が5月初め頃、ロシア・モスクワにある第三国の大使館を通じて亡命したと報じた。

パク氏は、朝鮮人民軍総参謀部の副参謀長などを歴任した大物である。ほかにも、金正恩氏の統治資金を管理する朝鮮労働党39号室や、「第2経済委員会」の高位級幹部が韓国に亡命したと伝えられている。

パク氏の亡命説には一部に「事実でない」との指摘もあるが、39号室の幹部については、わがデイリーNKジャパン編集部も独自に亡命情報を入手している。

このように幹部らの脱北が相次いでいるのは、些細なことで側近らを銃殺してしまう、金正恩氏の統治手法に恐怖心を抱いているからに他ならない。本来は対人用でない大口径の4連装高射銃で人間を文字通り「ミンチ」にし、それを他の幹部らに無理やり見せつける正恩氏のやり方は、ある意味で彼の狙い通り、恐怖心の醸成に成功しているわけだ。

しかし若年の彼は、人々の気持ちを過度に委縮させることがどのような結果につながるか、理解できていないようだ。

北朝鮮のようにカネもモノも足りない環境下では、現場の責任者たちが様々な場面で機転をきかせ、あるいは英断を下すことなしに、社会は回って行かない。金正恩氏の恐怖政治が、どうにかこうにか回っている北朝鮮社会の歯車を、完全に狂わせてしまう可能性は低くないのだ。

ちなみに先日、金正恩氏が視察中に激怒した大同江スッポン工場の支配人が銃殺されていたことが明らかになった。

実は北朝鮮メディアは、正恩氏が激怒したときの様子を動画で公開しているのだ。それを見ると、職員たちが金正恩氏の前で、こわばった表情で直立不動の姿勢を取ったり、泣き顔のような表情をする老幹部らしき人物も見られる。

【動画】金正恩氏、スッポン工場で「処刑前」の現地指導

無慈悲な「殺人」が行われる直前の恐怖の場面を、北朝鮮の人々はどのような思いで見ているのだろうか。

高英起(コウ・ヨンギ)

>>連載「高英起の無慈悲な編集長日誌」一覧

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記