北朝鮮当局が、国家が国民に視聴を禁じている韓流ドラマなどの「不法映像」に対する取締を強化している。2012年には、外国映画のDVDを大量にコピーして市場に流通させていた業者を、見せしめとして公開処刑したほどだ。

そうした現状の中、北朝鮮住民たちの関心は、取り締まりの強化で見づらくなった映像から「非公開図書」――つまりは禁止された書籍に移りつつあるという。

平壌市内の「大同江書店」。売られているのは公式に発売された本だけだ。(画像:読者提供)
平壌市内の「大同江書店」。売られているのは公式に発売された本だけだ。(画像:読者提供)

平安南道(ピョンアンナムド)の内部情報筋が米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)に語ったところによると、北朝鮮において一般国民がプリンターを当局の許可なく所持することは、スパイ罪に問われるほどの重罪である。その理由は、反体制ビラや偽札を印刷できるため、というものだという。

それでも密輸を行っている漁師と話をつければ、中国からプリンターを仕入れることは可能だ。さらに、インクカートリッジは街中の「コンピュータ奉仕所」で、何故か簡単に買うことができる。

通常、こうして出回っているプリンターの多くは、商売に使われる広告や看板、教科書をコピーするのに使われるが、その一方、当局により読むことが禁止された書籍の印刷にも使われる。旧ソ連で大々的かつ密かに行われてきた「サミズダート(地下出版)」が、北朝鮮でも行われているのだ。

平安北道(ピョンアンブクト)の内部情報筋によると、北朝鮮で「100部図書」と呼ばれるシリーズに収められたドナルド・ケーガンの『戦争の起源と平和の維持について』、デール・カーネギーの『人を動かす』、保衛部から出された『秘密戦争』、『人間の証明』、『ソ連偵探史』などが人気を集めている。

「100部図書」とは、かつて金日成主席の一族のためだけに翻訳されていた書籍で、社会科学院の翻訳者が大量に動員され制作された。著作権者などにライセンス料を支払わないまま、内部閲覧用に100部だけ印刷されていたのだが、少数が外部に流出したようだ。

こうした本は高級幹部、保衛部、保安署などの関係者や当局から資格を認められた作家などしか読めないことになっているが、北朝鮮で出版されたものでもあり、摘発されたとしても重罪にはならないとのことだ。

一方で市場では北朝鮮で出版されていない「世界文学全集」なども大々的に売られており、今のところはさほど厳しい取締も行われていない。それでも、「今後は不法映像と同様に取締が強化される可能性がある」と情報筋は指摘した。

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