北朝鮮を訪れる外国人観光客の中で最も多いのは中国人だ。閉鎖された北朝鮮という国家に対する好奇心に加えて、社会主義的文化が、今なお残っていることから、「文化大革命時代への郷愁」を追い求めるのが北朝鮮旅行の動機だという論文がある。

開城市内の様子。90年代前半以前の中国にそっくりだ。(画像:読者提供)
開城市内の様子。90年代前半以前の中国にそっくりだ。(画像:読者提供)

論文は、鴨緑江をはさんで北朝鮮の対岸に位置する中朝・丹東出身の留学生リ・ファンシュ氏が、ニュージーランドのワイカト大学経営大学院に提出した「中国人の北朝鮮観光」。学生論文大会で最優秀賞を受賞した論文は、北朝鮮を旅行先に選んだ理由を以下の8つに要約した。

◯北朝鮮を訪れた理由

多数意見
(1)好奇心で
(2)北朝鮮住民の日常と北朝鮮の実際の姿を見てみたい
(3)中国の昔の農村の様子が残っている北朝鮮を見たい

少数意見
(4)マスゲームを見てみたい
(5)金剛山に行ってみたい
(6)朝鮮半島を分断する軍事境界線を見たい
(7)ビジネスチャンスを探したい
(8)伝統料理を食べてみたい

旅行者は、文化大革命を経験した中年層以上が多く、「まるでタイムマシンに乗って60~70年代に戻ったような気分になる」「北朝鮮の農村の姿は、中国がまた貧しかった頃の記憶を呼び起こす」と述べながら、概ね満足していると解答した。

地面に無造作に置かれたスローガン。(画像:読者提供)
地面に無造作に置かれたスローガン。(画像:読者提供)

一方、「満足できなかった」意見も少なくない。こうした回答者は、北朝鮮への好奇心や現実を知りたくて訪問したが、「移動に制限が多い」「インターネットが使えない」「夜に何もすることがない」ということを理由に挙げた。こうした回答に関連して、数年前に北朝鮮を訪れた日本人観光客は次のように語る。

「ホテルはゆったりしててとても快適だったが、シーズンオフだったためホテル内の施設が軒並み休業中で夜にすることがなかった。外を散歩したかったが、自由に出歩けず、ガイドに連れて行ってもらうしかない。行きたいところがあっても入国前にアレンジしておかないと中々連れて行ってもらえない」

また、「旅行費用の面でも魅力的」という回答もある。韓国旅行に比べると高いが、「相対的には安い」ことから、北朝鮮を旅行先に選んだと答えた旅行者もいた。

論文の筆者であるリ氏が、2010年に北朝鮮を訪れた際には3泊4日で3500元、昨年は4500元かかったという。

国境の新義州(シニジュ)から平壌まで5時間かけて鉄道で移動した彼は、車窓から見える貧困と劣悪な環境、それでもプライドの高い北朝鮮の人々に驚いたという。

平壌と新義州を結ぶ鉄道の車窓から見える農村。(画像:読者提供)
平壌と新義州を結ぶ鉄道の車窓から見える農村。(画像:読者提供)

しかし、「また北朝鮮に行ってみたいか?」という質問については、ビジネス目的の人以外は、ほとんどがNOと答えた。観光インフラが整っていないため、「大きな変化がない限りはリピーターにはならない」という。

米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)によると、平壌駐在の外交官が旅行できる地域はわずか8ヶ所に制限されている。これは英国のアンレー外務担当国務大臣が語ったものだ。

外交官が訪問可能なのは平壌、新義州、元山(ウォンサン)、金剛山(クムガンサン)、沙里院(サリウォン)、松林(ソンリム)、海州(ヘジュ)、クァイル郡の8ヶ所と非常に少ない。

デイリーNKでは、平壌駐在のスウェーデン外交官の苦しく寂しい暮らしについて伝えているが、北朝鮮が本気で観光業で成功するならば、外国人の移動制限を大幅に緩和するなど、大胆な開放策が必要だろう。

「他のどの国でも当たり前のようにできる、散歩や自由なショッピングが北朝鮮ではできないのだから、もどかしく感じるのは当たり前だ。別に難しいことを要求しているわけではない。市場に行くことがなんで悪いのか全く理解できない」(前述の日本人)

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