セウォル号の遺族たちは何に憤っているのか…「子供の消えた街」からのレポート

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セウォル号沈没事故を巡る謎とは、どのようなものがあるのか。前掲書で列挙されたものの中から、一部だけ抜き出してみよう。

◇韓国の捜査当局は5月15日、事故の原因について「ムリな改造で復元力が低下していたセウォル号を船員たちが急変進させたことによって船体の貨物が一方に偏り、バランスを失って沈没した」との見解を発表した。しかし、ほかの政府機関による分析や操舵手の証言では、船は急変進していない。

◇捜査当局は、しっかり固定されていなかった貨物が動いたことで船が大きく傾き、沈没に至ったとしている。しかし実際には、船は貨物が動く前に大きく傾いていたとする生存者の証言が多数ある――。

◇船が傾く前、船体に大きな「衝撃」が走ったという乗員乗客の証言がある。また救助船の到着前、沈みゆくセウォル号のすぐ近くに長さ100メートルほどの「怪物体」が突然現れ、間もなく消えたのをレーダーが捉えている。その正体は何なのか――。

このうち「怪物体」については「韓国軍との合同演習に参加していた米軍の原潜ではないか」との説が、インターネットなどで取り沙汰された。単なる「陰謀論」と切って捨てたくもなるが、前掲書で郭氏はこの説についての判断を保留している。

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「なぜなら、捜査当局の主張こそが最もいい加減だからです。彼らは、船がバランスを崩して沈没したと分析した根拠について、具体的な数値や条件を公開しようとしない。検証できない主張を事実と認めるわけにはいかず、従って事故原因については様々な見方が残るのです。

当局はまた、事故の当日には被疑者として警察署に留置すべき船長と船員らを、捜査幹部の自宅やホテルに泊めるという前代未聞の行動を取った。被疑者たちは、いくらでも口裏合わせが可能だったわけです。

さらに謎めいているのは、セウォル号が事故の際に国家情報院に直接連絡するマニュアルを備えていたことです。国情院はスパイやテロ事件を扱う諜報機関であり、船舶事故の救難体系とは無縁の存在。旅客船がそんな組織と連絡を取り合うなど普通なら考えられない。こんな事実が重なれば、人々が『陰謀』の存在を疑うのはむしろ当然でしょう」(郭氏)

遺族関係者「産経新聞はよくぞ書いた」

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冒頭で郭氏も述べている通り、セウォル号沈没にまつわる疑惑は、いま初めて提起されているわけではない。遺族団体を支援する弁護士グループは昨年5月末、旅客船の運航管理や救難体制の不備、海運業界と政官の癒着、事故後の不透明な捜査過程など、約100項目にも及ぶ「疑惑リスト」を報告書にまとめている。