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【階層社会北朝鮮(上)】金正日没落後の報復に怯える北朝鮮の核心階層から続く)

1960年代までの北朝鮮はまだ、社会主義の国と言えたが、その後は他の社会主義国では見られない金日成唯一思想に染まった国となった。

一般国民は社会主義という複雑な概念すら持っておらず、ただ誰もが平等に一緒に分けあって暮らすという考えを持っていた。そう見ると、実際に1980年代までは金氏一家や特権層を除く一般の事務職や労働者、農民などの生活水準に大きな差はなかった。豊かではなくとも、なんとか食べていける国だった。

しかし、今は違う。20年前と比べると、北朝鮮の国民の間には明確な生活水準の差が現れている。マイカーを乗り回す富裕層がいる一方で、その日暮らしを余儀なくされる人々は増えている。

1990年代の北朝鮮を襲った食糧難は、社会に著しい苦痛と混乱、そして変化をもたらした。数十万人とも数百万人とも言われる餓死者の多くは一般労働者、農民など社会の最下層で発生した。もちろん、体力が弱い子どもや老人は言うまでもなかった。

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初めて食料配給が途絶えたとき、北朝鮮国民は数ヶ月我慢すれば国が解決してくれると信じ、お粥と白湯で飢えをしのいだ。しかし、半年経っても配給が再開される兆しはなく、状況はむしろ悪化した。

50年以上に渡って配給制度に慣らされた国民はそれでも「もうちょっと待てば配給が来る」と思い、手持ちの物を売り払って食べ物に変えた。

国民の多くは、家にあったテレビ、ミシン、タンスなどをなけなしのカネで売り払い、食べ物に変えた。家を売り払って食べ物に変えたり、商売の種銭にする人もいた。

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また、飢えのみならず、膓チフス、パラチフス、コレラなどの伝染病が蔓延して亡くなる人も数多くいた。市場で物を売ってその日暮らしをしていた人たちは、伝染病になって市場に行けなくなり、収入が途絶えた。食べ物を買うために家財道具を売り払ったものの、治療費に消えた。

(参考記事:北朝鮮・清津で伝染病蔓延、感染者は3000人以上

市場の食料価格は、その半年で高騰した。1994年当時、一般労働者の月給は120北朝鮮ウォン。コメ1キロを買うのがやっとだった。やがて、栄養失調で一人、また一人と斃れていき、4年間で300万人が餓死にしたとも言われる。

1994年の夏から咸鏡道(ハムギョンド)、両江道(リャンガンド)、慈江道(チャガンド)など北部で大量餓死が発生した。亡くなった人があまりにも多く、遺体の処理と、親を失ったコチェビ(ストリート・チルドレン)を管理する9.27常務という組織が作られるほどだった。

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労働者や農民が飢えに苦しんでいるころ、幹部たちは食糧配給を受け取ったり、食糧供給所を経て食糧を買うことができた。

外国からの援助品として持ち込まれた薬品、衣類などを市場で売り払い、この時期にむしろ金持ちになる人も現れた。

買い手に明け渡す前に家族全員が食卓を囲んで食事をし、一家離散するというケースもあった。バラバラになった家族は、コチェビになって各地をさまよい、結局は飢えて亡くなった。

配給に頼り切って安定的な暮らしをしていた人たちは、自分と家族の命を守るためのサバイバルを迫られた。市場での商売だ。商才に長け、幹部とのコネを持っていた人たちは生き残り、むしろ豊かになった。

いち早く商売を始めた人々は、食べ物を求めてやって来た人たちから家財道具を安値で買い取り、転売して大儲けした。また、幹部から横流しされた薬品、衣類、生活用品など、外国からの支援品も大いに売れた。

外貨稼ぎ機関に勤める人々は、人々が山から取ってきた薬草、山菜を、海外から取り寄せた小麦粉や砂糖と交換し、大儲けした。権力と結託した商人は大儲けし、ほとんどの人は貧乏になった。

2002年の7.1措置の後から、北朝鮮政府は農民市場を総合市場として活性化させた。これにより、以前より商売が楽にできるようになり、国全体の暮らし向きが多少改善した。

しかし、その流れに乗れなかった人々は、社会の底辺で糊口をしのいでいる。そんな底辺にいる人々は、全人口2100万人のうち、1400万人に達すると推測される。

去年の12月26日、対北朝鮮支援団体の「良き友」は、北朝鮮の食糧配給の順位を1位から4位までに分けて、4位、つまり最も配給を後回しにされる一般労働者600万人と、農民800万人が、食糧危機で命の危機にひんしているとの専門家の分析を紹介した。

そのうち、個人耕作地から得られる作物と、市場での商売で得られる現金でなんとか暮らせていける人々を除いた500万人は、トウモロコシ粥で日々延命する最下層の人々だ。彼らには耕す土地もなければ、パン焼き機、飴を作る機械、ミシンなど利益を生み出す生産手段を一切持っていない。