「二等兵の手紙」を歌った韓国の歌手故キム・グァンソク
「二等兵の手紙」を歌った韓国の歌手故キム・グァンソク

板門店の共同警備区域で勤務する韓国軍と北朝鮮軍の兵士が、ひょんなことから友情を育むストーリーの韓国映画「JSA」は、日本でも大ヒットした。

この映画の挿入歌が、「家を出て列車に乗り訓練所に向かう日」という出だしで始まる「二等兵の手紙」だ。韓国の歌手故キム・グァンソクが93年に歌って大ヒットした曲で、今でも歌い継がれている。

ところが、なぜかこの曲が北朝鮮軍(朝鮮人民軍)に入隊を控えた北朝鮮の若者たちにも歌われているとデイリーNKの内部情報筋が伝えてきた。

平安北道(ピョンアンブクト)の内部情報筋は、「軍隊入隊者を選ぶ召募対象選抜が学校別に行われている。毎年3月になると軍隊入隊者を送り出すお祝いの雰囲気になるが、その時に友だちと歌うのが『二等兵の手紙』だ」と語った。

さらに、「昨年まで、学校では『二等兵の手紙』が韓国の歌(K-POP)だと知らず歌われていた。担任教師も一緒に歌っていた。今では韓国の歌であることが広く知れ渡り、韓国映画『JSA』も広く知られるようになった」と伝えた。

入隊前夜、街中に響く歌声

北朝鮮で軍隊に入隊する時期が来ると、入隊者はまず市の軍事動員部で身体検査を受け、準備が整ったら頭を丸坊主にする。道の軍事動員部に行く前の10日間は自宅で過ごせる。北朝鮮の兵役は10年と長く、一度軍隊に入るとなかなか帰郷できないことから、当局がささやかな配慮を見せているようだ。

入隊直前の10日間、トンム(友だち)たちは、夜な夜な集まってきて、ギターをひきながら「二等兵の手紙」を歌い合う。その歌声は街中に響きわたる。親はギターの音を聞くと涙を流し、年寄りは「生きて帰って来い」と声をかける。新兵訓練でくたくたになった後も皆でこの歌を歌う。

韓国の歌なのになぜ問題にならない?

北朝鮮の一般庶民たちは違法にもかかわらず、K-POPのみならず韓流映画や韓流ドラマもある程度見ていることは、既に知られているが、ここまでおおっぴらK-POPを歌っても問題にならないのだろうか。

実はこの「二等兵の手紙」は、北朝鮮の七宝山音楽団が「去る日の誓い」とタイトルを変えて歌っていることから問題視されないと内部情報筋は説明する。

七宝山音楽団は、朝鮮労働党の統一前線部直属の音楽団と言われているがその全貌は明らかになっていない。2000年以降、韓国の歌の歌詞を一部変えて歌い、対南プロパガンダ用に活用してきたが、いつしか北朝鮮の人々にも知られるようになった。

内部情報筋は「二等兵の手紙」が人気を集める背景を次のように説明した。

「いつも判で押したように同じ忠誠心を強要させられる歌(プロパガンダ・ソング)ばかり聞かされているせいか、入隊を前に自分の素直な感情を表現した『二等兵の手紙』が愛されている」

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