駐韓米大使を襲撃したキム容疑者は「従北」?

「南北は統一されるべきだ!」「戦争訓練反対!」「今日はテロをやった」「ウリマダン(私たちの庭)の代表だ」「チラシも作った。訓練反対のチラシだ!」

5日に起きた駐韓米国大使襲撃事件で、キム・ギジョン容疑者は犯行時にこう叫んだという。

北朝鮮の主張と重なることから、一部の韓国メディアからは、はやくも「従北左派」(北朝鮮に賛同、追従すること)と見なされ、同様の見方をする与党セヌリ党からは、事件の背後を徹底的に調べるべきとの主張も出ている。

一方、「奇行」を繰り返すキム容疑者は、周囲の支持を失って孤立していたとも言われている。

韓国メディアによると、「ウリマダン(私たちの庭)統一文化研究所」の所長を務めるキム容疑者は、1980年から文化活動(民族主義的立場から韓国文化にアプローチして民主化運動を進める運動)に参加。最近では、「竹島(韓国名:獨島)を守る」活動を展開し、ロビー活動のため国会にもよく来ていたという。

2007年には、1988年に起きた事件の真相究明を要求して焼身自殺未遂。同年、島根県の竹島の日制定に反対して「竹島」に2007年に住民票を移した。

2006〜2009年までの3年間には、統一部長官の委託を受け、学生と市民を相手に統一と関連した講義をする統一教育委員として活動した。2006〜2007年の間に、植樹を目的に北朝鮮の開城を8回も訪朝している。97年から2007年まではリベラル色の強い聖公会大学の客員教授を務めていた。

2010年には、重家俊範日本大使にセメントの固まりを投げつけて逮捕されたが、執行猶予付きの有罪判決を受けた。

北朝鮮メディアは過去に「キム・ギジョンの行動は当然」と擁護

こうしたキム容疑者の過去の襲撃や行動について、北朝鮮メディアは擁護している。

韓国メディアによると、2010年の日本大使襲撃ついては、「日本大使が日韓新時代や共同繁栄云々することに激怒したキム・ギジョンはコンクリートの塊を投げた」と報道した。

また、朝鮮中央放送も「韓国のネチズンがキム氏の行動を支持する文を載せた」としながら「キム・ギジョンの抗議行動は、日本に対する怒りを投げたことであり賛美を受けて当然だ主張した」と伝えているという。

デイリーNKジャパンが調べたところ、北朝鮮が運営する対南サイト「わが民族同士」に、キム容疑者を擁護する記事が掲載されていた。

2011年1月12 日、「南朝鮮と日本の『軍事協定』の締結を糾弾する汎国民決議大会進行」というタイトルの記事では以下のように伝える。

独島(竹島)を守る」のキム・ギジョン住民は、日本大使に抗議していたの身柄を拘束された過程と日本の独島強奪野望、これを黙認、ほう助している南朝鮮当局と米国を非難して発言した。

北朝鮮がキム容疑者の行動を擁護していたことは間違いないが、だからといって今回の事件の背後に北朝鮮の存在があると見るのは早計だろう。ただし、米韓合同軍事演習が始まった矢先の事件であり、米韓関係に悪影響を及ぼす可能性もなくはない。

そうした懸念からか、韓国の朴槿恵大統領は「駐韓米国大使への攻撃は韓米同盟に対する攻撃だ」とキム容疑者の犯行を非難するコメントを出している。

一方、アメリカの前国連大使のビル・リチャードソン氏は、CNNに対して電話インタビューで次のように語った。

「アメリカ政府関係者が攻撃対象になる事態は世界的に増えているが、同盟国の韓国でこのようなことが起こるとは驚きを隠せない」

2011年にキム・キギョン容疑者を擁護する記事を掲載した「わが民族同士」

2011年にキム・キギョン容疑者を擁護する記事を掲載した「わが民族同士」